君のクローバー。
ともだち
って響きが、くすぐったかった。
しあわせがあの日壊れて、ジジィがいなくなって、日常が変化して
嫌われることになんか慣れていたのに
仲間が出来ることなんてなかったのに
『お前は、一人やない。忘れんな』
誰かに、心配されることも好感をもたれることもなかったはずなのに
気が付いたら、手放したくないモノばかりが溢れていて
その内のどれか一つでも落としてしまえば終わりな気がした。
だから、何も落とさないように
傷つけないように、失わないように
そうやって歩いてきた。
なのに、
「俺は、奥村が好きや」
なんで
なのに、なんで…
真っ直ぐに射る目線
「別に返事なんか、ええけど。言っとこう思うて」
「なんで…」
「好きに、理由なんかあらへんわ。俺は奥村が好き、それだけや」
「友だちだろ…?」
「…そうやった。でもな、ちゃうんや…何しとっても、危なかっしくて見とれん。」
一歩一歩近づく距離に固まって動けない
罪悪感でいっぱいだ
「…俺は、誰も幸せにできねーから」
一人言のように小さく呟いた
「決め付けんなや」
なのに、拾われてパズルのピースのように元の場所に戻される。
「ちゃうんや。奥村、誰かを幸せにしたりたいとか、傷つけたくあらへんとか…俺は奥村が俺の好きを受け取ってくれたら、そんで幸せなんや」
「…………勝呂…?」
なぁ、なんでそんな悲しそうな顔してんだ。
また、一歩近付いた。
「俺は、お前に救われた」
腕が伸びて、抱き締められる。
「…勝呂、?」
あったかい
熱は広がりだして、心臓が徐々にスピードを増す。
俺が怖がったものだ
純粋で、綺麗で、形がなくて、なのにあったかい
「奥村、俺はお前が好きや」
ドクンと心臓が大きく鳴った
熱い、
顔や心臓に熱が集まりだして、目から零れる。
零れるモノを見せたくなくて、目の前の胸に頭をつけて背中に腕を回す。
「奥村、気持ち悪ないんか?」
左右に首を振るので精一杯だった。
勝呂の心臓がバクバク言ってる。
一つ大きな音で心臓が鳴ったのを切欠に、体が引き離された。
涙で視界が揺らぐ
見上げた世界が勝呂でいっぱいになって、柔らかいぬくもりが落ちた。
あったかい
「……今、どんな気分や?」
「わかんねーよ…、なんかあちぃ……でも、嬉し、い…」
深呼吸する、勝呂の息遣いが間近で聞こえる。
「奥村、好きや」
溢れた感情を名付けるならば、きっと幸せなんだろう。
ぬくもりは広がって、やがて満ち満ちてゆく。
幸せという名を持って
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