反比例する。
「俺、勝呂はかっけぇと思ってる。」
背中に刺さった言葉は、ナイフより痛かった。
「なんやねん、急に」
小さく一人ぼやいた言葉は、空気に溶けて消えていった。
奥村との距離はどんどん離れて、数メートル先にいた猫や志摩と合流する。
「…坊っ」
「志摩くんっ、」
「坊っ、!!奥村くんは、ええ奴やっ」
「…知っとるわ、ぼけぇ」
猫や志摩もすり抜けて、足はどんどん奥村から離れていく。
「お前が、悪魔やって知っても嫌いになれん自分が一番嫌なんや…!!」
小さく力を込めて呟いたのは、紛れもない本心で
悪魔は許せない。
でも、奥村はいい奴。
「俺が一番よぉ分かっとる………………」
歩幅は自然に小さく
距離はどんどん遠く
「勝呂っ!!!」
声だけが、背中に刺さった。
[目次]