燃え盛る炎の中、告げられた真実と託された使命。それらに雁字搦めにされたまま、あれから一歩も動けない。
欲しいものはなにひとつ手には入らなくて、大事なものはてのひらからこぼれ落ちていって、己を縛っていたはずの使命にいつしか縋り付くようになっていた。
本当は今すぐにだって、大声で泣き叫んでしまいたかった。喉の奥のツンとした痛みを必死に飲み込んで、腹のあたりがきゅうと締め付けられるのをぐっと堪えて、奥歯を食いしばって眼を見開いて、涙がこぼれるのを必死に堪えた。
だって、今のここに自分の感情を受け止めてくれる人間はいないから。
(姉上だけは、わかってくれると思っていたのに)
あの時振り払われた手を握り締める。爪が食い込みてのひらに痛みが走る。
ジュダ龍の場合
ひっでえ顔だな、そう言ってジュダルは白龍のほおをつまんだ。いつもなら直ぐに払いのけるはずなのに、白龍はされるがままになっていた。
ジュダルは首を傾げる。おかしいな、と思いつつさらにほおを引っ張る。痛みが伴うはずなのに、白龍は表情すら変えない。
「痛くねえのか」
ジュダルの問いかけに白龍は数度瞬きをした。喉の奥がひどく痛い。腹のあたりもだ。
「いたい」
白龍の眼から大粒の涙が溢れ出す。ジュダルは慌てて手を離した。白龍は着物の合わせを義手でぐっと握った。
「ずっと前から、ここが、すごく痛い……っ」
一度溢れてしまえば、もう駄目だった。
………
でもジュダ龍は堕転コースなので紅炎さんにぜひとも頑張ってもらいたい