私、ジュダルちゃんが例え私のことをどう思っていても、貴方のことが大好きよ。宮廷に何処にも居場所がなくて、泣いていた私に武人としての道を示してくれたこと、本当に感謝してるの。でもね、私、シンドリアでいろんな人と出会ってね、……叶わなかったけれど恋もしたし、はじめてお友達も出来たのよ。私、ジュダルちゃんが大事だけれど、シンドバッド様やアリババちゃんのことも、同じくらい大事にしたいの。貴方たちが戦い、傷つけ合うなんて、とてもじゃないけれど耐えられないわ……!
だからお願い、シンドリアとは戦わないで……!
お前、シンドリアに行く前は、そんなに甘っちょろくなかったぜ。もっとギラギラしてて、武人としてのし上がってやろうっていう野心もあったし、何より戦いが好きだったはずだ。それがどうした、バカ殿に骨抜きにされちまってよお!惚れた腫れたで簡単に手の平返しちまいやがって、これだから女は駄目なんだ。
……女だから何なのよ。性別は関係ないじゃない。
あるさ。女は情に流されやすいいきものだ。大体お前、レームやマグノシュタットとは戦争できてもシンドリアとはできねえって、それ、おかしいだろ?紅炎がそんなの認めるわけねえよ。
お前の私情を公事に挟むな、バカヤロウ。
……諦めないわ、私。
私は私の大事なものを、絶対に取りこぼしたりなんてしない。
全部守ってみせるから。
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(ほんと、ばかな紅玉)
出自のせいで周囲から遠巻きにされていたことや、従者が過保護なせいもあり、この姫君は全くと言っていいほど知識も危機感もないのであった。
ジュダルは、紅玉の中身がまだ子どもなのを好ましく思うと同時に、無知であるがゆえの鈍さや無防備さを腹立たしく思っていた。
「お前、誰にでもこうなのかよ」
「え?」
「俺みたいに寒いからって布団に潜り込んで来る奴がいたとして、お前はそいつとそのまま一緒に寝るのかよ」
「ばっ、ばかねえ!そんなことする訳ないじゃない!殿方と一緒の布団で寝たりなんてしないわよぉ!」
「……俺は?」
「ジュダルちゃんは特別よぉ」
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「全く、母親が母親なら娘も娘、兄上や神官殿に媚を売って手懐けるとは、嫌らしい売女が」
吐き捨てられたその言葉に、紅玉は怒りで目の前が真っ赤になった。自分がいつ紅炎やジュダルに媚びたというのか。
しかし、言い返したところで後ろ盾のない自分が勝てるわけもなく、腹違いの姉共の怒りをますます買うだけである。夏黄文やジュダル、紅炎にまで迷惑がかかるかもしれない。それだけは嫌だった。
2013/11/08