火♀黒
某刑事ドラマパロ

休憩室に駆け込んだ黒子は、バッグをベンチに放り出し、乱れた息を整えようと、深呼吸を試みた。震える体を抱きしめるように背を丸めて、当時藁にもすがる思いで覚えたヨガの呼吸法を実践する。
違う、あの時とはもう違うのだ。
私は強くなった。もう何の抵抗もできない、脆弱な少女ではないのだ。
何度も何度も自分に言い聞かせ、ようやく落ち着きを取り戻した黒子は、ベンチにずるずると座り込んだ。
「……大丈夫かい、テツナ」
顔をあげると、赤司が入口に立っていた。
「はい、なんとか」
「何か飲む?」
「…カフェオレを」
赤司は自動販売機のボタンを押し、取り出した二つの缶のうち、片方を黒子に差し出した。そしてもう片方のプルタブを押し上げ、口へと運ぶ。その缶にミルクココアと書かれているのを見て、赤司がミルクココアを好むなんて知ったら、彼を恐れている新人たちはきっと驚くだろうなんて考えながら、黒子もカフェオレを口に運んだ。
「火神にでも迫られたか」
「……見てたんですか」
「いいや?ただ、そろそろあいつも我慢の限界なんじゃないかって思ってね」
赤司はフッと小さく笑みをこぼす。黒子は、笑いごとじゃありません、と赤司をにらんだ。
「そうだね、君にとっちゃ死活問題だ。それに、青峰と距離を置いた意味もなくなってしまう」

「……どうしたんだ火神」
デスクに戻ってきた火神の頬を見て、木吉はぷっと吹き出した。
火神の頬には、平手打ちの跡であろう紅葉がくっきりと浮かび上がっていたからである。
「笑わないで下さいよ、木吉さん」
「さてはお前、主任にちょっかい出しただろ」日向が火神に問いかけた。
「な、なんでわかるんすか!?日向さん、まさかエスパーっすか」
「んなわけあるかダァホ、大体お前の頭ん中はだだもれなんだっつーの」
「あれ、もしかして火神、主任が男性恐怖症なの、知らなかった?」
伊月の言葉に、火神は目を瞠った。
「主任が、男性恐怖症……?」
「そう。俺らも詳しくは知らないけど、なんかトラウマがあるみたいでさ。会話とかは普通にできるんだけど、自分のことを『女性として』っていうか、性的対象として見ている男が駄目なんだって」





2012/08/10
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