木日
合宿の夜、誠凛2年部屋他のメンバーは自主練に行ったので都合よく二人きり




本当に、戻ってきたんだな。
日向がメニューから顔を上げずに呟いた。木吉に言ったかもしれないし、もしかしたら独り言だったのかもしれないが、とにかくそう呟いたのを聞いて、木吉は目を丸くしたあと、「何を言ってんだよ、俺は今ここにいるじゃねえか」と笑った。
「いや、分かってんだけどよ、でもさ」
消毒液のにおいや、いつも枕元に生けられた綺麗な花(木吉曰く祖母の仕業だとか)や、白いシーツ、木吉を見るとそういうものばっかり思い出していけない。月に一度通った病院への道だとか、ぽつりと漏らした、バスケしたいなあ、のつぶやき。霧崎第一との試合、無理して笑った木吉の顔、握りしめた拳が手のひらに食い込んだ痛み、そんなものばかり。
「もう、いなくなったりしないよ」
まるで日向の心の中を読んだかのような返事だった。心配するな、と大きな手のひらが日向の頭を撫で回す。
「……当たり前だ、ダァホ」









2012/08/29
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