黒子と青峰
※全中の時期とかよくわからないので都合のいいパラレルだと思っていただければと思います
夏休み、若干グレ峰と若干ノイローゼ気味黒子


合宿とかめんどいな、と青峰くんがつぶやいたから、じゃあさぼりますか、と僕は彼の手を引いて歩き出した。


向かった先は、駅だ。


「おいテツ、待てよ!何考えてんだよ」
切符売り場で一番安い切符を二枚買う僕に、青峰くんは焦ったように問いかける。
当たり前だ。本当はこれから夏合宿が始まる。今頃他の皆は学校でバスに乗り込むところだろう。
「大丈夫です、赤司くんには後で僕が謝っておきますから」
「そういう問題じゃねえだろ、だってこれから合宿が」
「いいから。これ、青峰くんの分の切符です。とりあえず乗って、足りない料金は降りる時に払いましょう。行き先のご希望は?」
こうなったら僕はてこでも動かないことを青峰くんは知っている。ふう、とため息をついて、「……海」と言った。


乗り込んだ列車は新快速で、がたんごとんと規則的なリズムに揺られてすぐに眠くなった。意識が途切れる寸前に、肩に重みを感じたから、青峰くんも寝てしまったのだろう。
「お兄さんたち、終点よ」
肩を叩かれ目を覚ますと、老婦人がニコニコした顔で僕たちを見下ろしていた。
「……すみません、ありがとうございます」
慌てて隣で寝ている青峰くんを起こして、僕らは乗っていた電車から降り、普通列車に乗り換えた。賑やかだったさっきまでの電車とは打って変わって、二両編成の閑散とした電車だった。携帯を開くとものすごい数の着信履歴。赤司くんにメールを打った。
『ごめんなさい、青峰くんと一緒です。今回だけは見逃してください、後でなんでもするから』
しばらくして返信。
『仕方ないな。青峰も黒子も最近精神的に参っているようだから、バカンスでもしておいで。その代わり帰ったら……分かってるよね』
「……なんでもしますってお前、それ俺も入ってんの?」
青峰くんはさっきから携帯を覗いていたようで、げんなりした様子で聞いてきた。
「もちろん」
「テツ、お前、後で覚えてろよ」
「嫌です」
こんな軽口を叩き合うのもずいぶんと久しぶりだった。青峰くんと拳を合わせなくなって随分と経つ。みんなの才能が開花した今、コートに僕の居場所は無いに等しい。意図しないミスディレクション。僕は影でさえなくなった。まるで透明人間だ。


「……なんかさ、お前と話すの、ずいぶん久しぶりだな」
青峰くんも同じことを思っていたらしかった。






2012/08/29
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -