今吉→寮で1人部屋

金曜日の夜、11時過ぎ。今吉は机の上でブルブルと震える携帯を手に取った。
「もしもし、どないしたん桃井」
『あ、主将……夜遅くにすみません。青峰くん、そっちにいないですか!?』
桃井はひどく焦った様子だった。
『公園とかマジバとか、心当たりのあるところはみんな探したんです。でも、どこにもいないし、家にも帰ってないって聞いて……』
「おるで、青峰。代わろか」
今吉が電話を耳から離して青峰に差し出すと、青峰はぶんぶんと頭を振った。
『……いえ、いるならいいんです。どんだけ探したと思ってんのよ、このガングロクロスケ、って伝えてください』
「わかった、伝えとく。ご苦労さんやな、桃井」
『いえ、……では、おやすみなさい』
「おやすみ」
電話を切って、机の上に置く。そして、腰のあたりにがっしりとしがみついた青峰の、存外柔らかな髪を手櫛ですいた。
「何や、えらい甘えたやないか」
今吉が笑えば、青峰は頬を膨らませ、「うるせえ」と不機嫌そうにつぶやいた。その姿はとても、いつものふてぶてしい彼とは思えない。
練習が終わり、寮へと帰ってきた今吉を、青峰は部屋の外で待っていた。部活には顔を出さないくせに、こうしてごくたまに、今吉のところへやってくるのだ。
腰にしがみついた青峰を引き剥がし、今吉はベッドに腰をおろした。そうして両手を広げ、ほれ、と微笑めば、少しだけ頬を赤らめてばつの悪そうな顔をした青峰が、腕の中に飛び込んでくる。あんまり勢いよく飛び込んできたので、二人はベットに倒れ込む。胸元にぐりぐりと頭をこすりつけてくる青峰を見て、今吉は大きなネコ科の動物みたいだ、と思った。






09/11
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