例えば、練習が終わってじゃれあってる火神と黒子を見たときとか、今はここにいないアイツを思い出して無性にさみしくなるわけで。
募りに募ったさみしさを抱えきれなくて、学校をサボって病院へ行ってみた。そりゃあ、アイツは入院中だけど、何も一日中ベッドに座ってるわけじゃない。病室はもぬけの殻で、俺は差し入れにと買ってきた缶コーヒーを冷蔵庫にしまって、壁に立て掛けてあったパイプ椅子を拡げて腰掛けた。昨日の練習の疲れがまだとれなくて、体が少し軋んだ。穏やかな日差しは心地よくて、

「あれ、日向。どうした」
大きな手のひらに肩を揺さぶられて俺は目を開けた。どうやら寝ちまったらしかった。
「学校は?」
「………ん、サボりだ」
「えぇ!いいのかよ」
「別にいいよ」
木吉は持っていたバスケットボールを枕元の棚に置き、着ていたTシャツを脱いでベッドに放り投げた。棚から着替えを探す木吉の背中に俺は問いかける。
「なあ、もうバスケして平気なのか」
「ん、軽いシュート練くらいならいいってさ。無茶はしてねえよ」
「……そうか」
両足で地面を踏み締め、シュートが打てるぐらいには回復したのだ、木吉の足は。そう考えるとひどく安心した。でも、やっぱり無茶しそうで不安で、それになんだかさみしくて、人肌恋しくて、ひさしぶりにコイツの広い背中とか見たら、なんかもう。
「なあ」
木吉が着た新しいTシャツの裾をくいくい、と引っ張った。木吉は一瞬目を見張ったあと、へにゃりと笑って俺を抱き締める。
「今日は甘えたがりだな」
「うっせ、バカ」




06/16
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