廉造と蝮
※♀勝呂/また生理ネタ
明陀には色々と秘密が多いが、次期座主の勝呂竜士にも、人には言えない秘密があった。

彼は、否、彼女は、女性である。

座主になれるのは嫡子のみと、明陀ではそう定められている。女が生まれたら、『男として生きる』。それが座主血統の掟だった。
だから、彼女は男名である『竜士』という名前をつけられ、男物の服を着せられて育った。彼女が女であることは両親と、僧正家のみが知っていた。廉造と子猫丸は、『坊が女だと知られないため』の護衛だったのだ。
勝呂はその掟をきちんと理解していて、歯向かうようなことはしなかった。幼いながら、自分の背負うものを分かっていたのだ。
けれど、廉造と子猫丸は知っていた。
彼女が時折、羨ましそうに道行く同年代の女の子を見つめていたのを。

□□□

「なあ蝮姉、中3になっても生理が来ないて、大丈夫なんか」
よく晴れた秋の日のことだった。珍しく自分のもとを訪ねてきた廉造がいきなりそんなことを聞くので、蝮は怪訝そうに眉をひそめた。
「はあ、いきなり何を言うとるの。アンタはいつまで待っても生理なんか来ないで」
「いや、俺ちゃうで?坊の話や」
蝮の顔が強張った。廉造はお構いなしに続ける。「誰も気にしてへんみたいやから。俺の姉ちゃんたちは皆小学校で来たて言うてたし」
なあ、坊の身体、大丈夫なん?
真剣な顔で聞いてくる廉造に、蝮は息を飲んだ。誰もが考えないようにしていた、彼女が女であるという事実を、この少年は真っ向から受け止めているのだ。
「………流石にちょっと遅いかもしれへんな。私かて中1の時やったし」

□□□

「あっ、蝮姉……」
「子猫丸は」
「学校。俺はサボったわ。……なあ、坊は」
「やっと来たみたいやで、アンタ勘がええな」
「そうかあ……」
「廉造には言うとくわ」
蝮は廉造の耳元に口を寄せた。
「竜士様、本当は一回来てたんやて。小6の秋に。けど、止まったらしいわ。多分、ストレスのせいやと思う」
「……ストレス」
「ええか、廉造。もう十分分かってると思うけど、もう一遍言うとくで、男らしく振舞っとってもあの方は女子や。気張ってはるけど脆いお方や。一番近くにいるお前が、あの方を守っておやり」

□□□

「このままやとあかんよ」
廉造が呟いた。
「このままやと、坊が壊れてまう」

□□□

「坊な、生理がきたんよ。もう聞いた?小さい頃はあんま分からなかったけどな、肩は俺より薄いし、腕や足も細いんよ。胸かてこれから大きゅうなる。これから、坊はどんどん『坊』やなくなるで」

「いつまでも誤魔化せる思うてたら大間違いやぞ」




10/05
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