ラブコメで20題
01.【しますぐ】
待ち合わせには、わざと遅れる。五分、いや十分。真面目で几帳面な君は必ず十分前には待ち合わせ場所に着いている。そうして、時間ぴったりに、どうしたんやって電話を掛けてくる。そのひどく不安げな声色に吹き出しそうになるのを我慢しながら、すんません、今行きますから、と返す。家を飛び出し、走っていく。待ち合わせ場所では、君が俯いてしきりに時間を確かめている。俺が声をかけるとぱっと顔をあげ、一瞬とても嬉しそうな顔をしたあとに、遅いわアホって、頬を膨らませる。坊とのデートが嬉しすぎて、昨夜よく眠れんくて、なんて言えば頬をかあっと赤く染めて、冗談言いなや、ってあたふたする。君が俺のために百面相してくれるのが嬉しくて、可笑しくて、
だから待ち合わせが好きなんです
03.【金廉】
志摩家の人間は酒に強い。飲んでも飲んでも酔わない。お父もお母も柔兄もお姉たちももちろん俺もみんなそうだから、当然廉造だって酒に強いんだと思っていた。
だから、たまには付き合え、と飲ませてみたら、予想外にも、廉造はチューハイ一本でべろんべろんに酔ってしまった。
「へへへ、きんにぃ〜……」
なんて、へらへら笑いながら擦り寄ってくるので、冗談半分で「お前、そんなことしてると、襲ってまうで」って言ってみたら、これまた予想外にも、赤面して「金兄なら……いいよ……?」なんて言う。まあ、
正直こういう展開を待ってました
07.【八百蟒】
嫁と志摩の奥さんが旅行に出掛けた。久しぶりに二人きり、取っておいた少し高い酒を飲みながら、あわよくばなんて考えていたのに。
「おとん〜、たけ、おとんといっしょにねる〜」
「そうか、おとんと一緒に寝るか〜」
息子を家に置いていくなんて聞いてない。息子にばかり構っていて、自分は放ったらかしなんて聞いてない。
「ふう、やっと寝ついてくれたわ」
「ああ、そう」
「もう本当に息子いうんは可愛くて可愛くて……、お前さん、何を怒っとるんや」
「別に」
いい歳してやきもちなんて恥ずかしいから、
不機嫌な理由は教えられません
09.【勝♀志摩】
朝、子猫丸と一緒に学校へと向かっていたら、後ろから声をかけられる。志摩だ。
「あっ、坊、子猫さん、おはようございます」
「おはようございます、志摩さん」
「……お早う」
「えへっ、坊、お早うのちゅーしてください」
「せんわ阿呆、ここは日本や」
「ケチ。ええよ、坊がしてくれへんやったら」
志摩の細い腕が俺のネクタイを引っ張り、やばいと思った時にはもう、唇に柔らかい感触。ちゅっというリップ音を立てて離れたピンクの唇を指でそっと撫でて、にこりと微笑んで「ごちそうさま」。俺の頬はきっと真っ赤。
「ッ阿呆、このビッチが!」
油断大敵。いつでも気を引き締めていないといけない。だって、この幼馴染み兼恋人は、好きあらば俺に抱きついたり、腕を絡めたり、キスをしたり。
だって、そういうのありえなくないか。人前で、
恥ずかしくないんですかそういうの
お題:確かに恋だった
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07/26