柔蝮
飲み会の帰りかなんかで歩いて帰る蝮姉さん(ほろ酔い)を柔兄さんが車で迎えに来て、しんと寝静まった街をゆっくり帰る、途中コンビニでウコンの力とか飲み物買って、車の中では珍しくバラードなんかが流れてて(cf.ポルノ/素敵すぎてしまった)っていう話
でも京都って山沿いじゃないと静かじゃないのかも


「なあ、まーちゃんは二次会行かへんの?」
「おん、堪忍な。私、明日も仕事あんねん」
「日曜なのに?大変やなぁ。祓魔師って忙しいんねぇ」
「まぁな。それじゃ、私の分まで楽しんでや」
「おん。またね」
「バイバイ」
中学時代仲の良かった友達に手を振って、蝮は一人踵を返した。

中学の同級会は思いの外盛り上がった。当時は幼馴染みの柔造のおかげで女子から意地悪をされたりもしたが、十年も前のこと、今はお互い笑い話にできた。途中、酔った男子が昔好きだったという女子に告白し、新たにカップルが誕生したりもした。
(私が友達出来ひんかったのって、蛇のせいやなくて志摩のせいだったんちゃうかな)
『宝生さん、おもろい人やんかぁ!うち、中学んときもっとあんたと仲ようすればよかったわあ!』と今日、何度言われたことか。
(思ったよりみんな、ええ人やったんやなあ)
そんなことを考えながら歩いていたら、後ろから来た黒い車が蝮の隣で止まった。運転席の窓が開いてゆく。
(……怪しいな)
蝮が印を結び、蛇を出そうかと身構えると、車の中から「蛇出そうとすんな、俺や俺」と、見慣れた男が顔を出した。
「……何しに来たん、志摩」
「そうツンツンすんなや。蟒さんに頼まれたんや、心配やから迎えに行って欲しい、って」
「父さまは」
「家でお父と月見酒や。そんで俺に」
「そか。……おおきに」
「珍しいカッコしとるやないか」
柔造は蝮の爪先から頭へと視線を動かす。蝮は紺色のワンピースにコートを羽織り、ハイヒールを履いていた。いつも束ねている髪も今日は下ろし、毛先を少し巻いていた。
「馬子にも衣装いうかなんというか、お前も女やったんやなあ」
「うっさいわ。それより、乗せてくれへんの?」
「ああ、すまん。後ろは荷物あるから前にな」
柔造に促され、蝮は助手席に乗り込む。後ろを覗けば、ギターやらアンプやらが載っていた。
「こん車、誰のや」
「金造のや。中古で買うたんやて。俺は、免許あっても車は持ってへんから。出すで」
車がゆっくり動き出した。





07/26
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