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♀柔造と♂蝮
柔造は一番隊の女隊長で蝮が医工騎士
柔蝮なのか蝮柔なのか


「……嫌や、放せっ!ウチはまだ戦える、ウチがあの悪魔倒さんと死んでもうた部下に会わす顔があらへん!」
「そない怪我で無理や!大人しゅうせえ!」
なおも抵抗を続ける柔造の両肩を掴み、蝮は強行手段として彼女の身体を布団に横たわるよう無理矢理押し戻した。
「………ほら、お前がいつも細い細い言うてる俺の腕でも、動けないやろ」
「…………!」
柔造はぎりりと歯を食いしばる。
「お前はもっと身体を大事にせえ。痣やら傷やら作りすぎや」
「……なんや、お前も『女やから傷なんてこさえるな』言うんか?」
「そんなことは言うとらん」
「言うとらんでもそういうことやろ!」
「志摩、あんまり大声出すな。他にも怪我人がおるんやから」
「…………男はみんなそうや。ウチが女やからってなめよって。一番隊のお嬢ちゃんなんて呼ぶ奴もおるし、こん傷かて男なら勲章モノやのに、女やと身体に傷こさえてしもて、って眉ひそめられて。とんだ男女格差社会やなあ」
「志摩」
「お前もほんまは思っとるやろ?こんなお嬢ちゃんに祓魔一番隊の隊長なんて務まるわけがあらへん、ほら、また部下を一人犬死にさせよって、ってなあ」
「志摩」
「何なん、ウチかてなれるもんなら男に生まれたかったわ、お父かてほんまは息子の方が良かったんよ、そうやないならどこの父親が娘に『柔造』なんて男の名前つけるんや」
「もうええ、もうええから、な」
押さえつけていた力を緩め、代わりに肩をとんとんと子供をあやすように叩けば、柔造の荒くなっていた呼吸が少しずつ落ち着いた。
「言いたいことは山程ありそうやけど、まずは身体を早く良くするんが先決やろ。せやないと一番隊の皆が困るからな。愚痴は今度居酒屋ででも聞いてやるから、今は我慢せえ。誰が聞いとるか分からへんからな」
蝮にしては優しい声音でそう柔造に言い聞かせれば、彼女は不本意そうな顔をしたが小さくうなずいた。
「……蝮、いつの間にそない口上手になったん」
「阿呆。俺は今も昔も、口下手なまんまや。ほれ、布団被っとき」
「ん」
柔造が布団に潜ったのを見届けた後、蝮は立ち上がり踵を返した。負傷者はまだ多い上に、医工騎士の半数は現地で負傷者の応急処置を行っているので、人手が足りないのだ。蝮も早く他の者を手当てしなければならない。
「蝮」
小さな声が蝮を呼び止める。振り返れば、柔造が布団から顔を出してこちらを見ていた。
「おおきに」
そう言って笑うものだから、
(……ああ、くそっ)
赤らんだ頬を見せないように、背を向けて手を振った。
(ほんま、手間のかかる可愛ええお嬢ちゃんや!)




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