蟒八蟒
幼馴染みの宝生蟒という男は、自分にとって一体何なのか。志摩八百造は、自分の中の彼への気持ちを、もうずっと長い間もて余している。
只の幼馴染みではない。親友?それも違うだろう。彼への想いは、もっと、ずっと深くて重いはず。
では、それは愛情?それも違う。愛情というのは、自分が妻に感じているそれのことだろう。八百造は同性愛者ではないし、蟒に対して、あのじりじりと胸を焦がすような気持ちや、時折背中をぞくりと駆け下りる欲望は抱かない。

「なあ、お前にとって俺は何や」
そんなある日、所長室に書類を持って現れた蟒にふと、八百造が尋ねた。
「何ですか、いきなり」
「ええから答えてみい。あと、二人きりん時は敬語やめえや」
「ん……まあ言うてみたら、私を形作る細胞の一部やな」
「細胞?」
「おん。お前さんがおらんと私が私でなくなるいう訳や。で、お前さんがここにおるちゅうことを確認するために、時折触れてみたり、抱いたりしてみる。確認できると、すっと心が楽になる」


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蟒さんの一人称は、若い頃は俺、年を取ったら私。言葉遣いは八百造より丁寧で、達磨より乱暴。達磨は真綿でくるんで大事に扱う。八百造は例えるなら熊のぬいぐるみ。大事だけれど、時折勢い余ってぎゅっと抱き締めすぎたり、噛みついてみたり。でも全ては愛情(?)の裏返し。蟒さんは年を取って丸くなった人だと推測。




02/19
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