紫呉とはとり
明日うちにおいでよ、と昨夜遅くに紫呉から電話があった。ああ、人肌恋しくなったのだと、直ぐに察しがついた。特に断る理由もなかったので、子供たちが家を出たあとにケーキを持って紫呉を訪ねた。

インターホンを押して暫く待つと、いつも通り和服を纏った腐れ縁の男が現れた。手土産のケーキを手渡すと彼は
「食べてからヤる?ヤってから食べる?」
なんてくすくす笑いながら尋ねてきた。全く、どうしようもない奴だと俺は溜め息をついた。

どちらでも良いから、お前の好きにしろ。

そう答えたら手を取られて彼の部屋まで連れていかれ、布団の上に投げ出された。机の上にケーキの箱を乱暴に置くと、起き上がろうとする俺の上に覆い被さって、性急に服を脱がしにかかる。
「おい、待て、ちょっ」
「どうせ脱ぐんだからさ、もっと楽な格好してきてよ」
「その前にケーキを冷蔵庫に入れろ。食えなくなるぞ」
どうせこの後長いだろ、そう言うと紫呉ははいはい、と笑いながら立ち上がり台所へと姿を消した。俺はジャケットをその辺に落ちていたハンガーに掛けた。いつ見てもこの部屋は汚い。こんな部屋でよく勃つものだ。
あいつも、自分も。

紫呉と初めて関係を持ったのは、高校の時だった。綾女が保護者相手に攻めだか受けだかと熱弁したあの時だ。そうか、男とヤればいいんだ、と隣で紫呉がぽつりと呟いた。男だったら、抱き締めても平気なんだ。
それを聞いて、なるほど、と思った。男なら、大丈夫。
そうしたら彼は、はーさん、俺とヤろうよ、なんて言ってくるものだから、人肌恋しかった俺は、まあ紫呉ならいいか、と簡単に身体を許した。
それから、どちらかが寂しくなったらもう片方が付き合う、という関係がずるずると続いている。





08/11
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