しま♀すぐ
中学からずっと志摩のことが好きだったけど、女子に囲まれる志摩にイライラ→イライラしてる自分に自己嫌悪→機嫌が悪くなり、心配する志摩に八つ当たり→お嬢はほんま可愛いげないなあ→プッツン→高校ではもう忘れよう→長かった黒髪を金造に切ってもらい染めてもらい→「せやけどええんですか?こんなに男らしゅうしたっても」「ええんよ。ウチ、もう女らしゅうしとるの嫌やねん。女でおるのが嫌やねん」→ちょっとずつ集めた髪留めも化粧品も全部捨てる→でもやっぱり悲しい→「しまぁ……」グスッ

ちょっと屑志摩と一途なお嬢

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私が髪を伸ばしたのは、お母の小言に屈したからでも、柔造のお願いを叶えるためでもない。
『髪の長いお嬢も見たいなあ』
と、誕生日に志摩がきらきらしたヘアゴムをひとつくれたから。
それを身に付けたいばっかりに、志摩にほめられたいばっかりに、愚かな私は髪を伸ばし始めた。

のに。

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志摩に群がる女子が嫌だ。
女子に囲まれてへらへらする志摩が嫌だ。
でも、勝手に嫉妬して志摩に八つ当たりする自分が、一番嫌だ。

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志摩を見るたび苦しくて、苦しくて、こんなに苦しいから、もういっそやめてしまうことにした。

「……なあお嬢、ほんまにええの?こんなに男らしゅうしたっても。せっかくきれいに伸ばしてたやないですか」
金造がハサミを片手に持ち、私の顔と雑誌とを不安げに見比べた。
「ええんよ。ウチ、もう女らしゅうしとるの嫌やねん。女でおるのが嫌やねん」
せやから、かっこよくしたって。
そう言ってにっと笑うと、金造は泣きそうな目をして、でもしっかりとうなずいて、ハサミを私の黒髪に入れた。

じゃきん、と音を立てて、髪が切られる。

髪と一緒にこの醜いどろどろした気持ちも落としてしまえたらと思ったけれど、そんなわけにもいかなくて。
髪を切ってスッキリするはずだったのに、気分はちっとも晴れなくて。
机の引き出しにしまってある、少しずつ買い集めた髪どめも、マニキュアも、アイシャドウも、日の目を見ずに終わってしまった。それらをコンビニの袋にまとめて入れて、口を固く縛る。捨ててしまいたかったけどどうしても捨てられず、引き出しの奥の奥にしまった。




02/15
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