子猫丸と廉造
志摩さんと喧嘩をした。

始まりは何だったか分からない。多分、授業中に居眠りばっかしてるとか、そんなたわいもない話だった気がする。
志摩さんのいつもの気のない応答にかちんときた僕は、言ってはならないことを言ってしまったのだ。
「志摩さんは気楽でええな」
「……何やて」
今までへらへらしていた志摩さんの顔がひきつった。「あ、やばい」と思うと同時に、「これなら効くわ」と思った。
「五男坊は気楽でええな言うてんのや!家のしがらみも何もないあんたに、家に押し潰されそうになっとる坊や僕の気持ちなんて分からんわ!」
がつんと、頬に衝撃が走った。口の中に血の味が広がって、ああ、殴られたのか、とぼんやり思った。志摩さんは泣きそうな顔をしていた。
「…………何や、それ、俺は……俺が、どんな思いで………っ」
ああ、僕は彼を傷つけたのだ。いちばん言ってはならないことを言ってしまったのだ。後悔の念が急にどっと押し寄せてきたけれど、もう遅い。
「………阿呆くさ」
志摩さんは踵を返して行ってしまった。僕は声をかけることも出来ず、ただ突っ立っていた。

「お、子猫やないか。どないしたん、こんなところで突っ立って」
突然背後からぎゅっと抱き締められた。柔造さんだった。
何も返さない僕を不審がって、柔造さんは僕の顔を覗き込んだ。
「………お前、頬っぺたどないしたんや」
「柔造さん、僕、志摩さんに、酷いこと」
視界がぼやけて、喉の奥がつんと痛む。じんじんと痛む頬を、生温い液体が伝った。


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10月の終わり頃に書いていたもの。いつかちゃんと書こうと思っていたシリアスネタです。しかし公式がやってくれたので完成させる気が無くなってしまったわけです。確か柔猫を匂わせつつ子猫さんと廉造が和解する、って流れにしたかった。しかしシリアスの中に柔猫ぶちこもうとするとか、空気読めって話ですね。てか子猫さん天使のはずなのに、私が書くとなぜかコンプレックスの塊みたいになってしまう。何故だ……!




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