結局は誰でもよかったことに気付いて、燐はふいに泣きたくなった。
生きることが、不安で仕方なくて、魔神の落胤である自分の存在を肯定してくれる誰かが、縋るものが欲しかった。自分を捕まえていてくれれば、相手など誰でも良かったのだ。雪男でも、しえみでも、勝呂でも、シュラでも、本当に、誰でも。
愛してると言ってくれたから彼を選んだ。抱き締められて、耳元で甘い言葉を囁かれて、自分も彼を愛しているような錯覚に陥っていたのだ。しかし、昨夜、ついに身体を重ねて、燐は気が付いた。愛してくれるなら、必要としてくれるなら誰でもよかったのだと。
「ほんまにかいらしいなあ、奥村くんは」
笑って頭を撫でてくるこの男の、志摩の、一番上の兄を殺した魔神の息子を「愛してる」と言ってくれた優しい彼の気持ちを踏みにじった自分を酷く呪いながらも、このぬるま湯のような幸福感を手放すことはできないのだった。


ぬるま湯




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