この間立ち読みした雑誌によると、処女を捨てる年齢は14歳が一番多いらしい。14歳、その頃私はただの女の子だった。そんな時に周りの女子は少しずつ“女”になっていたのかと思うと少し複雑だ。
この歳になって未だに処女だ。別に特別大事にしてきたわけじゃない。ただきっかけがなくて、気がついたらこんな歳だっただけ。だからって、今更焦っても仕方ないけど、少しだけ焦る。私、既に“重い”のかも。
でも、焦ってるからって誰にでも捧げられるわけじゃない。私にもそれなりの貞操観念とプライドはある。気持ちいいことはしてみたいけど、早く捨ててしまいたいとは思うけど、そんなに安い女じゃない、けど。

けど、やっぱり焦る。

朴にはこんなこと絶対話せない。いつもそういう会話はしなかった。でも、彼女には塾をやめてしばらくしてから付き合っている彼氏がいる。きっと非処女。
霧隠先生はあの格好だ。慎ましさなんて言葉、彼女には似合わない。絶対非処女。
杜山しえみはどうだろう。奥村燐と付き合っているのだろうけど、あいつは彼女を大切にしそうだ。でもわからない。男は野獣だ。グレーゾーン。
ここで思考は停止。友達と呼べるのは朴くらいで、塾には女性が少ない。比較できる女子はここまで。
反対に、男はどうなのだろう。
奥村燐はグレーゾーン。きっと杜山しえみが初めての彼女。
奥村先生は多分童貞。生真面目な人だし、女性に興味なさそう。
勝呂は、わかんない。あいつ見た目はチャラチャラしてるけど、中身は案外純情っぽい。
志摩は、多分非童貞。コンビニで平気でエロ本買えるし、軽いし。坊主のくせにね。
三輪くんは、……あんまり考えたくないけど、童貞だろう。

一人でずっとこんなことを考えていて、だんだん頭がパンクしそうになる。
処女を捨てると、何か変わるのだろうか。
大人になれるのか。強くなれるのか。
早く捨てた方がいいのか。まだ平気なのか。
頭がぐるぐるして、こんがらがってきたとき。
「でも出雲ちゃんの、そういうつれないとこも好きやあ」
なんて志摩がつぶやいた。
「何よそれ」
「なんやこう、男に媚びへんところっちゅーか、自分を安売りせんところが、ええよ。一度安売りしてもうたら、男は“この程度の女なんや”って思うさかい」
「………何よ、悪かったわね、プライド高くて」
ちゃうちゃう、と志摩は首を振る。
「せやから、出雲ちゃんはそれだけ自分を大事に思っとるてことやんか。男はな、そら女の子は好きやしセックスしたいから、誘われたら断らへんわけ。でも、“ああ、この子はこのレベル”っていうんかな?そう位置付けしてもうて、それ以上の魅力は感じへんの。自分を大事に出来へん人は、他人からも大事にされへんのや」
正直、目から鱗だった。
「………私、まだ処女なのよ」
「知っとるよ」
「重く、ない?この歳で」
「重いって言うような男は、所詮そこまでの男やと思うで」
「……ふうん、そう、なんだ」


ちゃらんぽらんだと思っていた志摩は案外まともな人間で。
私はまだ処女だけど、気持ちは焦るけど、私は自分が大切だから、絶対に安売りなんてしないって、そんなことを考えた、18のある日のはなし。





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