休日、三人で買い物に行った時のことである。ホームセンターの一角で、勝呂は呑気に首を振っている扇風機を見つけた。一時期はエアコンに押されて影を潜めていた扇風機だったが、今年は電力不足の影響なのか、例年より売れ行きが良いようだった。「夏を涼しく!」と書いた看板が下がっており、隣には簾や蚊取り線香も置いてある。
(……扇風機言うたら)
誰でもやってみたくなることがあるだろう。勝呂はきょろきょろと辺りを見回して、人影がないかチェックする。
(よし、誰もおらへんな)
扇風機に向かい合って、小さな声で
「あ゛〜〜〜〜〜」
「………坊、何してはるんや」
「んなっ!?」
後ろから声をかけられ、振り向けば大きなカートを押す志摩と、洗剤を抱えた子猫丸の姿が。
「ぶふっ、坊、もしかして『あ――っ』ってやっとったんですか?」
志摩がけらけらと笑い出す。
「これ、志摩さん」そう言う子猫丸もくすくすと笑っている。
「やかまし!何やお前ら、馬鹿にしよって!」勝呂は恥ずかしいのか頬を少し染めて、二人の頭をばちこーんと叩いた。
「あ痛たた…ほんま、可愛ええお人やなあ」
「そないいえば、昔三人で扇風機の前に座ってやりましたやろ、あーって」
「そないいえばそやな、坊、やってみましょか」
「は!?何で今やらへんとあかんのや、恥ずかしいやろ」
「ええからええから、ほら、子猫さんも」
「はいはい」

「「「あ゛〜〜〜〜〜」」」


扇風機




07/05
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