8月が終わった言うてもまだむし暑くて、アイスでも食べようと志摩さんとふたりでコンビニへ行った帰り道。
夕暮れの薄明かりの中、志摩さんが急に立ち止まった。
「……志摩さん?どないしたん」
「子猫さん、あれ虫やろ」
「虫?……ああ、ほんまや、蝉やねえ」
カタカタと震えながら指差す志摩さんの指の先を見れば、十歩くらい先に蝉がひっくり返って落ちていた。
「蝉もかわいそうやねえ、7年土の中におっても、外に出たら7日で死んでまうんやろ?」
「あいつらに同情の余地なんてあらんで、あんなのは滅んだ方がましや」
「もう、志摩さんたら。ほら、行きましょ?坊に買ったハーゲンダッツ、溶けてまうやろ」
「いや、動きたいんはやまやまなんやけどな、足ががくがくして動けへんねん」
「はあ?もう、しっかりしてや志摩さん。道のはしっこをそうっと歩けばええやろ」
「そういう問題ちゃうんや、あいつらは少しでもこっちの気配を感じたら、最後の力を振り絞り、断末魔の叫びをあげて襲いかかってくるんや」
「んな、大袈裟な」
「なあ子猫さん、お願いや、一旦戻って遠回りしてくれへん?なっ、お願い」
「しゃあないな」
でもどの他の道にも蝉は落っこちとって、寮から徒歩5分のコンビニの筈なのに、部屋についたのは30分後。勉強頑張っとる坊のためにふたりでお金を出しあって買ったせっかくのハーゲンダッツはどろどろに溶けてしまっていた。玄関で僕達を出迎えてくれた坊には「どこのコンビニまで行っとったんや」と呆れられ、溶けたアイスを渡すわけにもいかへんから体の後ろにさっと隠した。
志摩さんは蝉の恐怖とハーゲンダッツが溶けてしまったのが悲しかったのと坊の顔を見て安心したらしく、ちょっと涙目になっていた。


--------------
アイスはもっかい冷凍庫で凍らせて、このあとちゃんと坊にあげました\(^O^)/




09/03
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -