去年畑の隅に食べ残しの西瓜を棄てたら、そこから蔓が伸びてきて、小さな実をつけた。
「すいかや、すいかがなっとる!」と坊も廉造も子猫も大喜びしたが、少し大きくなったところで金造と味見したところ、とても食べられるようなシロモノではなくて、「これはあかん」ともとあった場所に棄ててきた。
畑から帰ると金造があたふたしながら「柔兄、どないしよ、どないしよ」と走り寄ってきた。続いて聞こえる子供の泣き声。それから坊、廉造、子猫が泣きながら廊下を走ってやってきた。
「柔造、あのすいか、勝手に食べてしもたんか」
「え」
「ひどいで柔兄、俺ら楽しみにしてはったのに」
「え」
「毎日毎日水くれて、おっきくなるのを楽しみにしてはったのに」
「え」
ばかばかばか、と三人で柔造を囲んでぽかぽか殴る。
とっさに金造の顔を見た。金造も泣きそうだ。どないしよ。俺ははあ、と溜め息をついた。

騒ぎを聞いた蝮がコンビニでスイカバーを買ってきて、「三人とも、これで堪忍な」と頭を撫でれば、涙はすぐに引っ込んで、三人は並んで縁側に腰を下ろし、笑顔でスイカバーをかじり始めた。
その様子をぽかんと見ていると、
「ほれ、あんたらも」頬っぺたに冷たい感触がして、振り向くと蝮がおんなじスイカバーを差し出していた。
「お、おおきに」
受け取って、袋を開けると、懐かしい甘い香り。何年ぶりだろうか、スイカバーなんて。
「全く、あんたらアホ兄弟はなにやっとるんや」
蝮がはあ、と溜め息をつきながらスイカバーをかじる。
「坊たちが西瓜を楽しみにしてたん、気付かなかったんか」
「気付いとったよ」
「じゃあ何であんなこと」
「でもな、俺と柔兄もおんなじくらい楽しみにしてたんよ」
金造がぽつりと呟き、俺は気恥ずかしくなって蝮から顔を背けた。


まだまだ子供やな、そう言って蝮が笑うから、うるせえ、と言ってまた一口、西瓜の形をしたアイスを頬張った。


西瓜




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