気がつかないはずがなかった。
時折兄さんと志摩くんの間に流れる、甘い空気に、生まれたときからずっと兄さんの側にいる僕が、気がつかないはずがなかった。

赦せなかった。
神父さんが亡くなって、修道院を離れて、僕にはもう本当に、兄さんしかいないのに、兄さんには他の大切な人が、僕より大切な人がいるってことが、赦せなかった。

だから。

「ちょ……おい、雪男っ……やめろ、雪男!」
任務から帰ってきた僕を玄関で出迎えた兄さんの、項に小さな赤い痣を見つけたら、自分の中でなにかが押さえきれなくなった。兄さんの肩を押して壁に押し付け、唇を強引に重ねる。兄さんは激しく抵抗する。流石の僕も兄さんの馬鹿力には敵わない。直ぐに突き飛ばされ、僕は反対側の壁に背中を強く打ち付けた。
ぐ、と呻く僕を見て、兄さんは血相を変えて僕に走り寄った。
「ゆ、ゆき、大丈夫か!」
そう言って僕の顔を覗き込んだ彼の背中に腕を回して、そっと引き寄せて、項の赤い痣を舐めてみたら、彼の肩が跳ねた。
次は抵抗されないように、揺れていた尻尾を片手で掴んで、懲りない僕はもう一度唇を重ねた。
行為の途中、兄さんは何度も涙を流しながら「志摩、志摩」と呼んだ。身体は熱いのに、それを聞いた僕の心はどんどん冷えていって、後に残ったのはむなしさだけだった。


さみしい




07/25
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