これの続き

「メフィスト、俺の小遣いを上げろ」
次の日、燐は理事長室でメフィストに向かって言った。
「おや、これはこれは奥村くん、ここに来るなんて珍しいと思ったら。前も言ったでしょう、それはできません」
メフィストは紅茶を口に含みながらにやりと笑った。
「それとも何ですか?まさか私に言うことを聞かせるようなネタでも、用意してきたと言うんですか?」
「そのまさかだよ」
燐はポケットから携帯電話を取り出し、メフィストに突き出した。
「お前、ジジイと恋人だったんだろ」
一瞬、メフィストの目が見開かれたが、すぐにいつもの飄々とした表情に戻った。
「……藤本め」
「おっと、ケータイを壊しても無駄だぜ」
燐は逆のポケットから出したSDカードをちらつかせる。
「……なるほど、データはすでにコピー済み、というわけですか」
「さあ分かったらメフィスト!俺の小遣いを月5万に……」
「しかし奥村くん、私だって貴方の弱味を握っていること、忘れていやしませんか?」
メフィストはにやりと微笑んだ。
「……どういうことだよ?」
「私は貴方が魔神の息子だと知っている。そしともうひとつ」
メフィストはふかふかの椅子から立ち上がり、デスクの向こうに立つ燐の首筋から頬を掌でゆっくり撫で上げた。
「君と雪男くんのことも」
「………!」
燐は身体を強張らせた。
「分かったらほら、早く塾へ向かいなさい。もう授業は始まっているでしょう?」

こうして燐は、メフィストとの取引に失敗し、携帯電話に残されていたメールや着信履歴も全て削除された。SDカードも没収。
結局、お小遣いを上げてもらうことは叶わなかったのである。

燐が帰ったあと、メフィストは燐から取り上げたSDカードを自身のピンク色の携帯電話に差し込み、メールの履歴を読む。
燐から渡された携帯電話を見て、自分が特別な日に送ったメールが全て保護されていたことに、メフィストは驚いた。それから、自分の番号しか登録されていないことにも。
どうやら自分は、あの双子の兄弟の次くらいには、彼の心を占めることが出来ていたみたいだ、とメフィストは微笑んだ。


履歴/下




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