「あー暇だなー」
今日も今日とてクルーの笑い声ばかりが響くモビーディック号もとい白ひげ海賊団は実に平和である。見張り台の縁に顎を乗せてぐでんと脱力しきっているナナは、彼女の全身から溢れ出ているダルいですオーラを隠そうともせずに甲板で笑い合うクルー達を眺めていた。
「みんな何に笑ってんのかな」
そんな独り言を呟き、わたしも混ざりたいなーなんてぼんやり考えているナナの背後に青い炎を身に纏った一羽の大きな鳥が静かに降り立った。そして。
「よい!」
「ぐぁっ!?」
その鳥は瞬く間に人へと姿を変えると、甲板を見下ろすナナの膝裏を自身の膝で勢いよく突いた。かくん、と折られた膝にバランスを崩しながらナナは慌てて後ろを振り向き、そして自分を見下ろす男の顔を認識するとその表情をひきつらせる。
「げっ、マルコ…!」
「サボってんじゃねェよい」
「サボってなんか」
「ないとは言わせねェよい。事実、船の外から飛んでくるおれに気付けなかったんだからなァ」
そういわれてしまえばナナは何とも反論出来ずに口を真横一文字にギュッと結んだ。
「ったく、おれが敵だったらお前死んでたかもしれねェんだよい」
「そんな大げさ――」
「油断大敵って言葉、知ってるかい?」
「いひゃいひゃいひゃい!」
言葉を言い終える前にマルコによってギュッと容赦無く頬を抓り上げられ、ナナは彼のごつい手を叩いて抗議する。
「もう!やっと帰ってきたと思ったらいきなり説教!?」
「やっと帰って来れたと思ったのにお前がおれ以外の事考えてんだから腹いせに説教してやりたくもなんだろ」
「腹いせって……何それ、愛しいんですけど」
と、互いの目を見つめ合って数秒。引き寄せられるように抱き合う二人。
「マルコ、おかえり」
「ただいま、ナナ」
こうして二人は愛を深めたのでした。めでたし、めでたし……
あいむほーむ!
「って、やってられっかこのバカップルが!!」
「なんだサッチ、居たのかよい」
「最初から居たわ!!……大体、ほんの半日離れてたくらいで大袈裟なんだよ」
「マルコ、ただいまのちゅーは?」
「そういえばまだだったねい」
「おれの話を聞けェェェ!!」