「だーれー…」
だっ!「うわ、何だオイ誰だ!?」正解は、あ・た・しでしたーっ!「何だ愛しのマイスイートハニーのナナじゃねェか、びっくりさせやがってコイツぅ(つんっ)」きゃはっ!…………っていうのが私のシナリオだったのに。
「どぅえあああああっ!!!?」
現実はそう甘くもないらしい。目隠ししようと背後からそっとのばした手を掴まれてそのまま背負い投げされて、身体が床に叩き付けられた。その衝撃で若干涙目だが、大丈夫だいじょう…
「何だ、お前か」
「ゲホっゲホっ…ウェッホ!」
「…、おれの背後に立ったお前が悪いんだからな」
「げふん…さーせん……」
なかなか甲板の床から起き上がれないあたしを跨ぐように仁王立ちをする船長。こんな風に見下されても構わない、むしろばっちこいと思えるのは後にも先にもこの人だけだと思うんだよね。うん。そんな感じでぼけーっと船長を見上げていたら訝しげに首を傾げる船長と視線がかち合った。
「…あ!そうだった!」
「?」
「船長、ハッピーバースデー!」
言って、可愛らしくむちゅっと投げキッスしたら船長は眉をぴくりと動かし固まってしまった。あれ?照れちゃった?うわ、まじかその顔もっと近くで見たい!そう思うのに上手く身体がいうことをきかない。想像以上にダメージはでかかったらしい。どちくしょう!こなくそ!動け、あたしの身体!
「ふふっ…ふふふふふ」
「!?」
「…何だ、そういうことか」
「はい、びっくりさせようと思って」
相変わらず仁王立ちであたしを見下ろしてはいるもののその顔は何だか楽しそうに歪んでいる。正直言うと不気味だ。これでもかというくらいに口端を吊り上げた船長はしゃがみこんであたしの顔を覗き込む。
「それでこんな斬新な誘い方で、か」
「はい、そうで……は?」
「まんまと驚かされたぜ」
「…それは、良かった、です…?」
会話が噛み合ってんだか何だかわからない気持ち悪さは残るけども、船長が驚いたというのだから作戦は成功だ。あとはみんなに出てこいやの合図を送るだけ。…そう思って右手を上げかけたその時。
「ひぎゃあ!?」
するりと太股を撫で上げられた。
「まさかお前がこんなに大胆な女だったとはな」
「なななななな…っ!?」
「今更何驚いてやがる。スカート全開のパンツ丸出しで誘って来やがったくせに」
「ええ!?」
誰が!?いつ!?咄嗟に飛び起きる(と言っても上体だけで精一杯だったけども)と、確かにスカートがめくれあがって色気もくそもないパンツが丸出しになっていた。慌てて隠すも時既に遅し。投げられてから今の今までパンツ丸出しだったのだ。調子乗って投げキッスとかしちゃったよ、パンツ丸出しで…ああ、何コレ死にたい。
「よいしょ」
「え?」
ふわりと身体が宙に浮く。
スタスタスタ。
「………」
「………」
…………いやいやいや!
「せせせんちょーどどどこへ?」
「あ?おれの部屋だ」
「…つ、つかぬことをお聞きしますが…なぜ?」
「お前が“プレゼントはわ・た・し!ハート” って言ってきたからだろうが」
「そんなでしたかぁぁ!?!?」
確かに船長のことは大好きだしアイラブユーだしゆくゆくはそんな関係にもなれたらなって思ってたけどまだ心の準備が…って違う!今日はみんなで、“み・ん・な・で!”船長の誕生日をいわ…
「安心しろ、優しくしてやる」
「………はい(きゅん)」
仕方ないよね、船長だもん。
その笑顔には敵いっこないって
「あいつチョロいなオイ!」
「ナナ連れてかれちゃった」
「ってか、不発のクラッカー構えたまま出損なったおれ達はどうすりゃあいいんだよペンギン」
「おれに聞くな」