放課後、静かな教室で一人黙々とシャーペンを動かす。
窓の外からは時折、運動系の部活をやっている生徒の掛け声や吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。
ふと、書きかけのプリントから顔を上げて頬杖をつく。なんとなく横の席にて読書を続ける彼氏に視線を向けてみれば、同じタイミングでこちらを見てきた。


「それ、終わったのか?」
「ううん、まだ」
「早くやれよ。いつまでそれに時間かけてんだ」


文句を言う割には、また視線を本へと戻しているからきっと解き終えるのを待ってくれるんだろう。
さて、この中途半端なプリントをどうやって片そうか。
それにしても、提出期限を少し過ぎただけで始めに貰った枚数の倍のプリントを渡すなんて、あの先生はどうかしてる。…まぁ、うだうだと不満を漏らしたところで問題が簡単に解けるわけじゃない。
こんな問題、社会に出てから必要になんのかなぁ、なんて心の中でぼやきつつも提出点の為にはやるしかない。
なんとか最後の問題も解いてしまうと、シャーペンを机に転がして両腕を上に伸ばす。


「終わったー……」
「やっとか、随分と時間がかかったんだな」



プリントに集中していたから気付かなかったけど、ローは席を立っていたらしい。教室の出入り口から私に声をかけながら、こちらへ近付いてくる。


「どうせ私はローと違って頭良くなんかないですよーっだ」
「ヘェ…そういうこと言うんなら、このジュースはやれねェな」


そう言いながら軽く左右にパックジュースを振って見せつけてくる。それは私が普段から好んでよく飲むいちごミルクだ。


「折角、頑張ってる名前の為に買ってきてやったのになァ」
「すみませんでした」
「そうやって素直になっとけばいいんだよ」


わざとらしい溜め息をつくローに向かって素早く謝れば、ぽんっといちごミルクを渡される。
それを受け取り、取り出したストローを刺し口に刺して軽く吸えば、口の中で広がる大好きな味。それに満足していれば、こつんと頭を小突かれた。


「なに、のんびり飲んでんだよ。帰るぞ」
「はーい」


鞄とジュースとプリントを持って席を立ち、既に教室を出たローを駆け足気味で追いかける。


「ねぇねぇ、アイス食べたい」
「今ジュース飲んでんだろうが」
「だって、頭使ったらお腹空いたんだもん」


隣に並んで歩きつつ空腹を訴えれば、また溜め息をつかれる。しかも、今度はわざとじゃなくて見るからに呆れてます、といった様子で。


「…しょうがねェな。但し、コンビニのアイスだからな」
「やったー!」
「ほら、さっさとそれ提出して来い。でねェと、置いて行くぞ」
「やだ、待ってて!すぐ戻ってくるから!」


ローの言葉を聞いて、慌てて職員室へと向かう。
さっさとプリントを提出して、文句言いつつも待ってくれているローの元へ急いで戻ろう。それからアイスを買いに行こう。こんな風に考えているだけで、私の心はわくわくしてきて止まらなくなるのだ。



ある放課後の1ページ
(目的地まで肩を並べて手を繋いで)











2012.1.11 白飯さま

白飯さんから相互の記念にいただいちゃいました!何だかんだ言いつつ優しいローさんににやけた頬が戻りません!わたしの学生時代には味わえなかった青春を今ここで白飯さんに叶えていただけるとは(〇´∀`〇)

白飯さん、本当に素敵なお話をどうもありがとうございます!そしてこれからもよろしくお願いしますね!