「あの、さ…七野って彼氏とかいたりするの?」

「…………」


 面倒見がよすぎるというのも考え物だということを今、わたしは身をもって実感している。部活終了後の体育館、目の前に立ついかにも人の良さそうな先輩は誰かに頼まれたのであろうそんな質問を少し気まずそうに投げ掛けてきた。


「何でそんなこと…」

「あ、いや、なんとなくだよなんとなく」

「……いませんけど」


 そう答えた時に一瞬見えたホッとしたような彼の表情に思わず期待しそうになったけど落ち着けわたし。これは人に頼まれたが故の反応だ。ちなみに誰に頼まれたかというのも大方の予想はついている。


「作ろうとは思わない?」

「え?」

「いたら楽しいと思うけど…」


 言いながら先輩はわたしから目を逸らした。本当にそう思っているのかと聞きたくなるような態度だ。大して仲 良くない人の為なんかに柄にも無いこと口にして。そのくせわたしが今どんな思いでいるかなんて事は全く分かっていないのだから悲しくなる。


「…じゃあ、菅原さんがなってくれますか?」

「えっ」

「冗談です」

「ははっ、だよな!からかうなよ」


 苦笑を浮かべる先輩に溜息をつきそうになった。鈍い人だなぁ。


「もう行っていいですか?」

「あ、最後に一つだけ!…好きな、タイプは?」

「…………」


 ぱんっ、と手を合わせて申し訳無さそうに尋ねられたのはそんな質問で。
 まったく、この人は懲りもせずよくも…。 


「……菅原さん」

「えっ!?」

「には教えません」

「お前なあ…性格悪いぞ、七野」


 自分でもそう思います と、心内で密かに頷いた。だけど、悪いのは先輩だ。人の気も知らないで変な質問ばっかりして。そもそも誰かを使って好きな人の事を探るような人、わたしは好きになんかなれない。


「…っていうか頼まれたんですよね?」

「え…何、を?」

「今までの質問。誰に頼まれたのかもなんとなくわかります」

「……そっか、バレてたか」


 変な事たくさん聞いてごめんな、とあっさり事実を認め苦笑する先輩。そんな顔で謝られてしまえば何故だか急に自分が悪いことをした気になって思わず目を逸らした。


「でも、惜しかったなぁ」

「何がですか」

「七野の好きなタイプ。ちょっと興味あった」

「…っ、だから、それは……!」

「はいはい、俺には教えてくれないんでしょ」

「〜〜っ」









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