船に上がるとベポの他に二人、お店に来ていたキャスケット帽の人とPENGUINと書かれた帽子の人が立っていた。あ、と声を出すとベポがシャチとペンギンだよと紹介してくれた。

「ナナです、宜しくおね――」
「こいつがぁあ!?」

 人の挨拶を遮り、あたしを爪先から頭のてっぺんまでジロジロと見て本気で首を傾げているキャスケットさん。あまりにジロジロ見てくるものだから殴ってやろうかと思ったら、先にペンギンさんが失礼極まりないシャチさんの頭をはたく。そのさりげなさにちょっときゅんとした。

「あの…一応言っておくとローさんとは何もしてないです」
「えっ、じゃあどうやって!?」
「かくかくしかじかで」
「………」
「…ナナ、悪いがそれじゃあまったくわからん」
「ごめんなさいペンギンさん。えとですね」
「ペンギンには素直なのな!」
「部屋をノックしたら色気3割増しのローさんに迎えられてですね、」
「無視か!」
「シャチ、うるさいぞ」
「ペンギンまで!?」



* * *




「ってな訳で入団出来たんですよ!機嫌良かったんですかね、ローさん」
「機嫌、ねぇ……」

 ペンギンさんは顎に手を当てて意味ありげにぽつり呟いた。

「へっ、自分に靡かなかった女が珍しかっただけだろ!」
「………」

 めっちゃ靡いてたんですけどね、とは言わないでおこう。シャチさんの言葉にふいと視線をさ迷わせたことで感じる違和感。そういえばローさんとベポがいない。
 きょろきょろと二人の姿を探しているとペンギンさんがどうした?と首をかしげる。ローさんとベポのことを訪ねようと口を開いた瞬間、がちゃりと扉の開く音がした。
 音のした方を振り返れば開いたドアから何とも愛らしい白熊、もといベポがひょこっと顔を出していた。ちょ、なにあれ…きゅん!

「ナナー、キャプテンが今夜の寝床は自分で探せっていってるけどどうする?」
「ん?寝床?」
「おれのとこで寝る?」
「えっ!!!?」

 え、いや、そんな…!今のは何かの聞き間違いですか!?いや、聞き間違いなんかじゃない!あたし、ベポに誘われてる…!どどどうしよういきなり誘いに乗ったら軽い女とか思われちゃうかな…でも、こんなチャンス滅多に無いよね!?でもやっぱり……

「まさか本当に来ると思ってなかったから部屋用意してなくって、おれ今日は不寝番だし…って、ナナ?聞いてる?」
「え、何こいつ?立ったまんま寝てんの?」
「いや、何かぶつぶつ言ってるぞ…眠ってはいなさそうだ」
「ナナー?」

バタンっ

「「「っ!???」」」
「どどどうしよう、ペンギン!ナナ死んじゃった!」
「落ち着けベポ、理由はわからないが気絶してるだけだ」
「意味わかんねぇー!何なのコイツ!?」


その夜結局そのまま眠りについてしまったらしいあたしはとても幸せな夢をみました。


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