来てしまった。

 閉店後いつもならタラタラと行う掃除も食器洗いもマッハで終わらせて、シャ、シャワーも浴びてキャプテンもといローさんの部屋の前に立っている。マスターには入団テストを受けるとだけ伝えてきた。そしてここにきて問題発生。わたし実は、そういう経験したことないんですけど!偏見かもしれないが経験豊富そうなローさんを満足させるとか無理に決まってる。でもわざわざ時間を取ってくれたのにすっぽかすわけにもいかないし……あぁ、もう!あたし当たって砕ける!どうにでもなれ!

 コンコン

 ガチャ

「ひ…っ!」
「随分な挨拶じゃねぇか」

 出たぁぁぁ!!時間帯とあたしの気持ちの問題かもしれないけど夕方見た時より色気が3割増だよローさん!鼻血出たらどうしよう!変態だと思われる!入れと促されて言われるがまま部屋に入った。部屋のドアがパタンと閉まる。あぁ、もう逃げられない。

「しかし、本当に来るとはな」
「えっ、ちょ、あの…っ!?」

 早速ですか!!!?ドアが閉まってすぐ、ローさんはあたしの髪を一束手に取るとそれを器用にくるくる指に巻きつけた。背中には壁、目の前にイケメン、そして腰に回されるもう片方の手。近い!近いですローさん!しかもなんかいい匂いする!でもそろそろ離れてくれないとあたし…っ!あたしから出た二酸化炭素をローさんに吸わせるとか申し訳無さ過ぎて息を吐けずにいたら死にそうになった。

「まぁ、そんなに緊張するな」



無 理 で す!ふ、と笑ってするりと髪から指を抜きローさんは奥にあるベッドへと歩いていく。ぷっはぁぁぁあ!まじで死ぬかと思った!今の内に存分に呼吸しておこう…っ。のっけからこんなんじゃ最後までもたないよ、あたし。とりあえずあれだ、深呼吸しよう。すー、はー。よし!緊張やら何やらで掌から吹き出している汗を服で拭って自分も部屋の奥へと足を進める。

「で?」

 ベッドに腰掛け後ろに投げ出した両手で上半身を支えながら足を組む。いちいち無駄にかっこいいと思った。本当に。

「どう楽しませてくれるんだ?」
「…ど、どうも何も………」

 もう一度言おう。あたしそんな経験したことないんです!勝手がわかりません!拭ったはずの手汗がまた吹き出した。ぶわっ!ってか入団テストがこんなんでいいのか!?…はっ!まさか入団テストってのは口実でローさんはただあたしをモノにしてしまいたいだけなんじゃ?…あり得る!

「あの、あたし…」

 身体から入る付き合いはどうかと思う!もっとちゃんとお互いを知って、それから愛のあるせ、せ〇〇〇(自分の脳内だけど自主規制!きゃー)がしたいです!

「そんな薄っぺらい関係は嫌です!」
「ほォ?」

 って言ったそばからそんな舐め回す様な視線を向けないでください!やらしいイケメンめ!くそ、かっこいいこと言ったくせに揺らぐな自分!

「…ふふ、合格だ」
「…へ?」
「ご う か く」

 ひらがなに直してくれなくてもわかるから大丈夫ですよ!

「お前が大人しくベッドに上がったら犯してそのまま捨てていくつもりだった」
「まじ、ですか…」

 こえええええッ!!セーフ!セーフ!ちょ、ローさん本当にあたしに惚れてんの!!?あれ?もしかしてまたあたしの勘違いなの!?

「もうじきログも溜まる。明日の朝には出航するぞ」
「は、はい!」

 そう言ってさっさと部屋を出ていくローさんを慌てて追いかける。思わぬ展開で合格を言い渡されたためまだ実感がわかないと言うか、何というか…地に足が着いていないような奇妙な感覚だ。

 こんなにあっさり合格とか、いいの……?



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