ペンギンさんの部屋を出てシャチを探す。……が、部屋には真っ先に行ってみたものの当人はおらず艦内をぐるぐると歩き回るはめになってしまった。
 そしてその結果、あたしは世にも恐ろしく奇妙な体験を、まさにこの身に刻むのだった。いや、“この身を”刻まれたのだった。

「ぎゃああああああああああ!!」
「うるせェ、騒ぐな」

 ぎゅむ。唇を指でつままれ出口を失った声が口内にこだまする。じたばたと暴れてはみるものの、あたしをこんなパニックに陥れた張本人であるトラファルガー・ローさん(超イケメン)は依然涼しい顔であたしを見下ろしていた。
 それもそのはず。必死に暴れているあたしの“胴部分”は数メートルも離れた位置に存在しているのだから。

「んーーっんむぉーーーーッ」
「もっと刻まれてェのか?あ?」
「!……っ、」

 首を横に振った。……つもりだが、首から下がないので自信はない。
 とりあえず落ち着こう。今の状況をしっかり把握し整理して理解しなければ。
 ペンギンさんの部屋を出る→シャチの部屋へ行ったが会えず→濡れたんだから風呂じゃん?→風呂へダッシュ→脱衣所で素っ裸のローさんに遭遇→ガン見→凝視→凝視→斬られた…ハイ!!今ここォォォォォォォォ!!

「理解できませんでした!!!」
「脳みそ足りて無さそうだからな」
「どんなに頭良くても自分が体切られて平然と生きてる現象を理解出来る人なんかいませんよ!痛みもないし……わたし実は能力者だったとかですか!?!?」
「惜しいな。能力者はお前じゃなくおれだ」
「なるほど!」
「…………」

 頭部を落とされた。
 この上なく無防備なまま床との衝突を果たせばチカチカと星が飛ぶ。

「で、お前ここには何しに来た。まさか覗k「シャチを探しに来たんです!」

 その結果の意図せずの覗き(と言うか凝視)であって決してそれを目的としていたわけじゃない。得したとは思ってるけど。口が裂けても言わないけど。
 とりあえずここにもシャチはいないみたいだ。


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