艦内へと続く大きな扉をくぐり、薄暗い廊下をとぼとぼ歩く。あー、やっちゃったなんて後悔してももう後の祭りなわけで。認めさせてみせるとか大口叩いた直後にあんな逃げ方して……
「あぁ!もう!!」
「っ、どうした!?」
「ぎゃあぁぁ!」
びっくりした!びっくりした!びっくりした!口から心臓飛び出るかと思った…!まさか半径3メートル以内に人がいるとは思わなかった……。
バクバクとうるさい心臓をなんとか落ち着かせて目の前でぽかんとしているペンギンさんに慌てて謝った。そして笑われた。穴があったら入りたい。
「――ところで、びしょ濡れみたいだが大丈夫か?」
「急な雨に降られちゃいまして…」
「あぁ、ここは夏島が近いからその影響だな」
「なるほど…」
…とは言ったものの急な雨と夏島の関係はわたしにはいまいちわからない。
「とりあえず拭かないとな…ついておいで」
「あ、一人で大丈夫です!」
「奇声のわけも聞きたい」
「…………」
拒否権はないようなのでおとなしくペンギンさんの後ろをついて歩く。そうして一言の会話も無く辿り着いたのは彼の部屋。ギィとドアを開け……って、え?ペンギンさんの部屋…?
「どうした?入っていいぞ?」
「あ、はい……」
自慢じゃないがわたしの人生経験上、男の人の部屋なんていうのは育ての親であるマスターの部屋にしか入ったことがない。つまり今わたしは未知の世界に足を踏み入れていて、しかも男の人と二人きりという何ともアレなシチュエーションにあるわけで、だから結局何が言いたいかっていうと、入っても大丈夫なのかな……?
「クス…」
笑われた。
「心配せずとも何もしないから安心しろ」
……穴があったら入りたい。