外を歩けば嫌でも目に入る仲良く寄り添って手を繋いでいるカップル。他は他で自分たちは自分たちだと言い聞かせてみてもやっぱり羨ましくないと言えば嘘になる。彼曰く、そんな恥ずかしいこと人前で出来るか、だそうで。人前でキスしろとか言ってるわけじゃ無し、何がそんなに恥ずかしいのか私にはわからない。


「シカマルーさむい」
「上着着ろって言ったろ」
「手がさむいー」
「手袋すりゃいーじゃねぇか」
「…、…心がさむい」
「我慢しろ」


淡々と返される言葉に膨れて見せれば、彼お得意のめんどくせーで話題を流された。両手はしっかりとポケットに突っ込まれたままだ。どうやら今日も手を繋ぐことは出来そうにない。なので諦めて大人しく隣を歩くことにした。でもそれだけでは何だかしゃくだったので私はクールな女です手繋ぎたいなんて微塵も思ってませんみたいな顔をして周囲のカップル達に見栄を張る。

…バカか自分。余計虚しくなってきてすぐやめた。もう考えないようにしようとシカマルを視界から外し、周りの世界に意識を向ける。それなのに幸せそうなカップルばかりに目が行くのは何故か。これじゃあ憂鬱の無限ループだ。


「おい、曲がるぞ」


脳内で独り言を繰り返していたら突然腕を引かれ対応できずに少しよろけた。どんくせぇな、と降ってきた言葉に反発しようと顔を上げるとシカマルは言葉にそぐわない、優しい顔をしていてわたしは何も言えなくなる。


「…どこ、行くの?」
「遠回りして帰ろうぜ」


遠回り?あの面倒くさがりなシカマルが?どういう風のふきまわし?シカマルの考えてる事がさっぱりわからなくて、首を傾げたまま一歩後ろを歩く。メイン通りから二本外れたこの道に店は数える程しかなく、人通りも殆どない。滅多に通らない道だったからきょろきょろしていたら急に足を止めたシカマルにぶつかった。どうしたの、と鼻を押さえながら尋ねれば返事ではなく手を差し出された。


「ん」
「え?」


私を振り向くことなく、差し出された手を何事かと凝視する。すると私を呼ぶかのようにくいくいと指だけが動かされた。


「ほら」


寒いんだろ?って言ったシカマルに驚いて視線を上げる。そこに見えるのは綺麗に髪をまとめ上げた後頭部だけで、今シカマルがどんな表情なのかは想像するしかない。でも、それは真っ赤に染まった耳を見れば容易なことだった。手を繋ぎたいというわたしの希望を叶えるためにわざわざ遠回りを提案し、人通りの少ない道に入ってくれたのだ。不器用なヤツだと愛おしくなると同時にどうしようもなく嬉しくて。


「シカマルっ」
「ッ!」


勢いよく腕に抱きつけばよろりシカマルの体が傾いて、「どんくさいわね」と言ったら「うるせぇ」と額を小突かれた。






その、


「ったく、どんだけ俺のこと好きだよ」
「お互い様でしょ?」








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