ここ最近この席が酷く居心地が悪いと感じている。そして今日は今までで一番居心地が悪い。というのも隣の男子が朝からずっと私を凝視しているのが原因だ。耐えきれなくなって、午前の授業が終わったところで思い切って声をかけてみた。


「あの……なにか?」
「あ?あぁ、気にすんなよ」


無理です。そんなにじっと見られたら気になります。穴があきます。


「ナナ、お前目悪いの?」
「うーん…すこし」
「それ、ないと見えねぇ?」
「ううん」


普段の生活には特に支障ないけど文字を読むときなんかはかけてた方が見やすい、かな。と答えれば犬塚くんは眼鏡を指差した形のままふーん?と首を傾げる。出したりしまったりが面倒だからかけっぱなしなだけ。


「ちょっと外してみろよ」
「…、…何で?」


別に外すのは構わないけど、その理由がわからないことには素直にいうことを聞くのが不安だった。特別親しかった訳でもないし、彼の視線を感じるようになったのも最近だ。そのことと眼鏡と何か関係があるのだろうか。


「いいからいいから」


何がいいんだ。別にわたしが眼鏡を外したら目が3だとかそういう某アニメのようなギャグ要素はないぞ。それに眼鏡を外したら実は美少女だったという展開も残念ながらない。だからと言ってやっぱり断る程の理由もなくて。


「その辺にしとけよキバ、困ってんじゃねーか」


どうしようかと思っていたらどこかからひょっこり現れた奈良くんに助けられた。何でだよと反発する犬塚くんを引きずって奈良くんが去っていく。悪かったな。…って後ろ手上げちゃったりして、何だアレどこの王子様ですか。俺は諦めねーからな!とか叫んでいる犬塚くんに不安が拭いきれないがひとまず助かった。彼がこの眼鏡を狙う理由がわからない限りそうそう簡単には外せない。


昼休みが終わって午後の授業が始まる。隣から感じる痛い程の視線。すみませんでした、わたし何かしましたか。そんな状態が授業の間中ずっと続いて放課後にはもうげっそりだった。


「なぁ、ちょっとでいいからさ」
「だから、理由を…」
「頼む!」


ぱんっと両手を合わせて な!とか言われても困る。きょろきょろと王子様こと奈良くんを探すが彼は未だに机に突っ伏して眠っていた。王子、もう授業終わってるよ!頼みの綱が切れて狼狽えていると犬塚くんの目つきが変わる。


「どうしてもダメっつーんなら…」
「え…」
「力尽くだァァ!!」
「えぇぇぇぇぇっ!!?」


とっさに両手で眼鏡を抑えるとそれを犬塚くんが無理やり外そうとする。よく考えたらこんなに必死に抵抗する理由なんかないのに、今更後に退けなくなっていた。ってか眼鏡こわれる!こわれる!


「っのやろっ!」
「っ!?」


両手首を掴まれて眼鏡から手が外れる。少女マンガとかならこの体勢の次はキスなんじゃないかなとか恥ずかしいことを考える。まぁ、この状況からそんなまさかなコトはありえないと思うけど。へへっと笑ってどーだ、みたいなしてやったり顔をしているが犬塚くん。両手が使えなくなったのは君も同じじゃないか!と心の中だけで叫ぶ。口には出せない。チキンだから。そしてゆっくり犬塚くんの顔が近づいて、く…る?……ってえええええ!?何で!?どうして!?何この展開!!!?


「ちょ、ちょ、ちょ…っ!」

どうしたらいいかわからなくて固く目を瞑った。頭がぐるぐるして思考が追いつかない。間近に感じる犬塚くんの息遣いにわたしの呼吸は止まりそうだ。

カチャと音がして我に返ると犬塚くんが眼鏡(ね鼻にかかる部分)をくわえていた。えぇー…

両手の拘束を解かれて、脱力したわたしの腕は重力に逆らうことなくだらりと下がる。


「シカちゃーん!やっぱ外した方が可愛かったぜ」
「かわ…っ!?」






となりの


ニッと笑って嬉しそうに奈良くんを呼ぶ犬塚くんにもうポカンと口を開けることしか出来ない可哀想なわたし。ちなみにやっと起きた奈良くんは大きな欠伸の後に、おれ眼鏡派。とか言っていた。

後でイルカ先生に席替えを提案しよう




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