「ねえねえ」
「なんだよ」
テーブルに頬を乗せて両腕をだらりと下に下げたままシカマルに呼び掛ける。彼は何をするでもなくベッドに横になり天井を見詰めていた。端から見れば恋人同士としては異様な光景なのかもしれないが、わたしたちにとってはこのだらけ切った空間こそが常な訳で。それなら一緒にいなくても同じと良く言われるがそんなことはない。好きな人をすぐ近くに感じていたい程度の乙女心ならわたしだって持ち合わせているのだ。
「やっぱシカマルのことすんごい好きかもしんない」
特に深い意味は無く、あまりに居心地のいい空気に率直にそう思った。シカマルはわたしの言葉にむくりと上体を起こすと、不満げな視線を向けてきた。…あれ?嫌だった?まぁ、確かに今更かなとは思うけど、好きだと言ってそんな顔を向けられるとは思わなかった。
「かも?」
「え?」
「かもって何だよ」
「……すき、です」
「初めからそう言えっつうの」
なんて、シカマルは照れたようなふてくされたような曖昧な表情を浮かべた。なんだそれ。可愛いすぎる。思わず萌えって言ったらキモいって一蹴された。
「ってか今日シカマル誕生日じゃん」
「あー、そういやそうだな」
興味無さげに呟いてシカマルは再びベッドに身体を沈めた。まぁ、確かにシカマルはキバみたいに自分の誕生日にひゃっほーう!とか言って飛び回ったり(あ、いつもか。)しないだろうけど、それにしたってローテンションすぎる。
「プレゼント何にしようか悩んだまま結局何も用意出来なかったんだよねぇ…」
「別にいいって」
「んー…でも、さ」
この前のわたしの誕生日にはネックレス貰ってる手前、何も無いっていうのはちょっとなぁ…。シカマルはたまたま通りかかった店でたまたま見つけたからって言ってたけど、後からよくよく考えたら事前に色々と聞かれてたんだよなぁ。さりげ無さすぎて気付けなかったけど。実はわたしも事前のリサーチをと思ってやってみたけど見事失敗に終わっている。だって、返ってくる答が「別に」とか「特に無えな」じゃあ何の参考にもならないじゃないか。
「じゃあどっかご飯でも食べ行くー?」
「めんどくせぇからいい」
「うわぁ、やる気なー」
「お前にだけは言われたくない」
「プレゼント代わりに何か奢ってあげようと思ったのに…」
そこまで言うとシカマルは小さく溜息を吐いてちょいちょいとわたしを手招きする。シカマルが来ればいいじゃんって言ったら、今日は俺の誕生日だろ、とか……さっきまでまったく関心なかったくせに。仕方なくテーブルから重たい頭を持ち上げて膝立ちのままシカマルに向かう。ベッドに着いて仰向けになっている顔を覗きこめば、後頭部に回った手でぐいと頭を引き寄せられてそのまま唇が重なった。
「これで充分なんすけど」
僕を好きな君だけちょうだい
「…安上がり」
「おう」
>> Happy Birthday Shikamaru 2011
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