頼む、宿題写させて!とキバから電話が来たのが約二時間前。完全に頼む相手を間違えているキバと一緒にシカマルに泣きついたのが約1時間前。渋々部屋に通してもらい、数学の問題集を開いたのはいいものの30分もしないうちに飽きて今に至る。


「漢字の宿題はアスマ先生だから大丈夫でしょー」

「英語は外せねェな、紅先生怒ると怖ぇし」

「でもほら、辞書で単語調べるだけだから手分けすればそんなに辛くないよ。問題は数学じゃない?」

「あぁ、カカシ先生怒りはしねーんだけどペナルティがえげつないんだよなぁ」

「無駄な話し合いしてねぇでとっとと写しちまえよ」



いかに最小限の労力で後々の被害を回避できるかを話し合っていたら、ベッドに寝転がったシカマルがめんどくさそうにそう言い放つ。「確かに」とキバとシャーペンを走らせ始めたのも束の間、3問くらいを写し終わった所でキバがシャーペンを放り投げた。


「数学なのに数字より記号が多いってどういうことだよ!意味わかんねー」

「……………」

「なぁ、ナナもそう思わ……!?何こいつ、ちょー真剣に写して…「…ぐぅ。」ねぇ!」


おい!とキバに頭をはたかれて自分が寝ていたことに気付く。まずいまずいと自分の頬を両手ではさみ、眠気を飛ばして再び問題集に向かい合った。が、



「…ミミズ!?」



写し終えたはずの問題は正しくミミズ。辛うじて数字が2つ3つ読み取れるくらいだ。やり直し、かぁ……。



「あー、だめだやる気失せた」

「頑張れよ」

「シカマルだけ楽してずるい」

「お前が言うな」



唇をとがらせて文句をたらせば顔に枕を投げつけられた。しかし、顔面直前で枕をキャッチ。腹いせにそのままキバの頭にその枕をぶつけてやった。



「…お前、不意打ちとか卑怯なんだよ!」

「油断大て…ぶっ!」

「いいから写せっ…て、おい!」

「もとはと言えばシカマルが始めたんだからね!」



キバから投げられた枕を顔面キャッチして、シカマルに投げつける。それを見て笑い出したキバにシカマルが枕を投げつけた。かれこれ10分近く枕投げは続き、無駄に体温が上がったところで全員ばたんとその場に仰向けで寝転がった。



「あぢぃー…」

「ふぅ、ちょっと休憩……」

「…ったく、お前ら何しに来たんだよ」



仰向けになったことでさっきまで背中を向けていた頭上の窓から空が見えた。既に陽が沈み始めた空はオレンジ色に染まりつつあって何だかちょっと切ない。



「最近陽短くなったよね」

「もう8月も終わりだしな」

「うわ、何か切ねー」



寝転がったまま全員が空に視線を向ける。続く沈黙と部屋に射し込む西陽が更に切なさを煽って、わたしはたまらず勢いよく起き上がり「ねぇ!」と大げさに二人に呼びかけた。


「花火しない?」

「いいねぇ!」

「そんな余裕あんのかよ」

「大丈夫大丈夫、サクラたちも呼んでみんなで夏の思い出作ろうよ」



賛成と両手を挙げるキバと、知らねーからなと呆れながら満更でも無さそうなシカマル。そうと決まれば早速みんなに連絡だ。3人で手分けしてメールを送る。

数分後、全員から参加するって事と宿題は大丈夫なの?ってメールが届いた。ちなみにもちろんだけれどもナルトのメールには“行くってばよ!”としか書かれていなかった。












「宿題は花火の後に写すってことで」

「おう!じゃあ早速花火買いに行こうぜ!」

「花火の後って、お前らまさか泊まり込むつもりかよ!?」

「「もち!」」

「キバはまだしもナナはだめだろ」

「男女差別反対!」

「堅ぇコト言うなよシカちゃん」

「お前らなぁ…」






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