時折頬を撫ぜる風はひんやりしているのに、陽の光に照らされている屋上はぽかぽかと暖かい。屋上の中でももう一段高い場所、校内から屋上へと続く入り口の上。そこで昼飯を食べてそのまま寝ころんだ。今が冬だということを忘れてしまいそうなこんな気持ちのいい日に屋上での昼寝は最高だ。隣に寝ころぶナナもそう思ってるはず。

「あったかー…」
「なぁ、次さぼろうぜ」

うぁー悪いヤツ、とか言いながら満更でもないといった表情で目を閉じるナナ。それにならっておれも目を閉じた。少しして授業開始を知らせるチャイムが響く。

こうやってここで二人一緒に授業をさぼるのは何回目だろう。思えばおれがこいつに告ったのもここでこうしてサボってる時だったなぁなんて、思い出すと勝手に頬が緩んだ。

「──…」

あれから約2カ月。昔からナナとは友達としてよく遊びに行ったりバカしたりしてたもんだから(もちろんその時は他の奴らも一緒に)周囲からよく聞く、会話や名前を呼ぶのに緊張するということはまったくなかった。
だけど逆に、友達でいた時間が長すぎて今更“恋人同士がするようなこと”をするのがものすごく照れくさい。別にしたくないわけじゃない、むしろしたい。そんなこんなでこの2カ月、進展と言えば帰り道手を繋ぐようになったことくらいで。でも、おれとしてはそろそろ次のステップに進みたい。

「お前さぁ、」
「んー?」
「キスってしたことある?」
「……はい?」

一度閉じた目を開けて隣を見ると、ナナは驚いたような顔で数回まばたきをしてみせた。

「なに、唐突に」
「いいから」

そんなことを真面目に質問している自分が恥ずかしくて答えを急かす。普通ならそういう雰囲気ってモンを作るべきなのかもしれないけど、おれはそういう器用なことは出来ない。

「…ない」
「ねーのか」
「なくて悪かったわねー」
「いや、良かった」

つうか、おれだってねぇよ。ニッと笑ってみせればナナはまた数回まばたきをしておれから目を逸らした。柄にもなく照れているらしい。付き合い始めてから時々見るようになったそのしぐさ表情がすごく好きだ。

「…してみっか?」
「え…?」
「きす」

嫌ならいいけど。
コンクリートの床に肘をついて上体を起こしナナの顔をのぞき込む。照れて困ったように逸らされる目を見ていたら、どうしようもない気持ちになった。

「…嫌、じゃない……」

消え入りそうなその声を聞いて、拳をにぎるだけの小さなガッツポーズ。

改めて上体を起こし、ナナの顔の横に両手をつく。ナナの顔におれの影がうつり、視線がぶつかった。

「…目、閉じろよ」
「うん」

ナナが目を閉じたのを確認してからそっと唇を重ねた。







(もっかいしていい?)
(…ん)









***





kaiのサイトOPENのお祝いにこれを捧げます(^^)kai、遅くなっちゃったけどおめでとう!

2009.12.10 りょう.





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