昼休み、自販機の押し馴れたいつものボタンに指をのばす。ガコン。落ちてきた缶を取り出し、歩きながらプルタブを開けると独特の音が小さく辺りに響く。一口中身を口に流して、教室に戻るために降りてきた階段を上る。


「あ、シカマルだ」


その途中、階段を降りてきた同じクラスのナナとばったり遭遇。おれと同じく自販機に用があって降りてきたらしいナナは、何飲んでるの?とおれの手の中をのぞき込む。


「シカマルっていつもソレ飲んでるよね」
「まぁな」
「そんなにおいしい?」
「それなりに」


だって中身は少し甘いだけのただの紅茶だ。それに、おれの場合特にコレにこだわりがあるわけでは無く、ただ毎日どれにしようか選ぶのがめんどくせぇってだけの理由で同じものを飲んでいる。それを言えばナナはシカマルらしいと笑った。

「ね、一口ちょーだい?」
「………は?」


私いつもレモンティーしか買わないから味見させて、と。おれの手の中の缶を指す細い人差し指を見つめた。


「だめ?」
「だめっつうか、」


これは俺の飲みかけなわけで。それをナナにやるってことはつまりそう言うことで。無意識に視線は薄く色づく形のいい唇を捉えていて。これじゃあただの変態みてぇじゃねーかと気付かれる前に慌てて視線を逸らす。視界の端で煮え切らないおれの態度に首を傾げるナナ。


「あ」


しかし直ぐ何かに気付いたように口を開く。遅ぇよと自分の中だけで突っ込んでからまだ自分より高い位置にいるナナを見上げた。


「もしかしてシカマル、間接ちゅーとか気にする人?」


飲みかけを渡すのに迷っていた原因をそうもはっきり言葉にされると酷く照れくさかった。


「…悪ぃかよ」
「全然悪くないよ」


シカマルの意外な一面が見れて嬉しい。恥ずかしげもなくそう言い切られて頬が熱を持つ。この歳になってこんなことを気にしてるおれはやっぱりイケてねーんだと思う。


「仕方ないから諦めて自分で買うよ」


からかうように肩を叩く手を軽くあしらって、最後の3段を抜かし軽やかに地面に着地したナナの背中に呟いた。






Indirect kiss
(別にお前なら構わないんだけどよ)



「ん?何か言った?」

「いや、何も」






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