午前中に“お偉いさんの飼い猫探し”という何ともめんどくせぇ任務をこなし、午後空き時間が出来た俺はいつもの特等席へと足を運んだ。しかしそこには思わぬ先客がいて。


「……おい、ナナ」


その場所を独り占めするようにでかく寝転んでいる。声をかけたにも関わらずぴくりとも反応が返ってこないということは眠っているのだろうか。


「ったく呑気な奴」


仕方なく小さく空いたスペースに腰をかけ溜息をつく。何で俺がこんなに肩身の狭い思いしなきゃなんねーんだ。仕返しのつもりで、仰向けになって露わになったナナのおでこにデコピンを喰らわしてやった。

一瞬眉間にシワがよったもののそれはすぐに解かれ、またもとの安らかな寝顔へと戻る。不覚にもそれが可愛いと思っちまうなんて。


「……」


一度構ったらナナから目が離せなくなって。いらんところまで気になるようになって。すぅすぅと規則正しい寝息に合わせるように小さく上下する胸が。顔の横に可愛らしく放り出された両腕が。それに、何と言っても薄く開かれた唇が。


「チッ…無防備すぎんだよ」


近くに誰もいないことを確認してナナの唇に自分のそれを重ねる。少し触れただけでもわかるやわらかさに、このまま離してしまうのが惜しいと思った。しかしそんな考えは一瞬にして吹き飛ぶことになる。

ナナが目を覚ました。


「…っ!!」

「シカマル…これしきの狸寝入りも見破れないようじゃ、アンタもまだまだね」

「な!?い、いつから…」

「最初から」


最悪だ。俺は寝込み(というか狸寝入り)を襲ったとして、一生こいつに弱みを握られたまま生きていくのか…。それはもうめんどくせぇなんてレベルじゃない。


「ねぇ、何でキスしたの?」

「……お前があんまり無防備だったから…」

「そうじゃなくて!シカマルは私のこと好きなの?」

「!」


何を言い出すかと思えばこいつは。
確かにここにいたのがナナじゃなければ俺は他の場所をあたっただろうし、好きじゃないと言えば嘘になる。しかし主導権を握られている今の状況で正直に好きだと言うのも癪だった。


「き、嫌いじゃ・・ねぇ」


ちっぽけなプライドのせいでそんな中途半端でガキみたいな返事を返せば、ナナは俺をからかうように疑いの眼差しを向ける。


「つか、お前こそどーなんだよ?気付いてたんなら何でおとなしくキスされた」

「んー?嫌じゃなかったから、かな」


ニッと笑い、少し顔を赤くしてそう答えるナナ。形勢逆転を狙っての質問だったのに、意外にもあっさりそんな返事が返ってきたもんだから拍子抜けした。というか逆にドツボにはまった気がした。


「あ、そ…」


今にもだらしなく緩んでしまいそうな顔を隠すため空を見る振りしてナナから顔を逸らした。視線の先に広がるのは雲一つない青空で。






(次にこの空を見た時、伝えよう)






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