窓から見える里の風景はクリスマス一色に染まっており、普段よりもずっと賑やかできらびやかだ。きっともう少ししたらイルミネーションも点灯し始めるのだろう。


「奈良くん」

「はい」

「もうすぐクリスマスだね」

「あー…」

「クリスマスなんて爆発すればいいのにね」

「なんスかそれ、ひでぇの」


 人がまばらな待機所。わたしの言葉にククッと歳の割に大人びた笑いを零した奈良くんは、読んでいた本を畳み手元にあったカップを口元に傾けた。


「クリスマスに何か恨みでもあるんスか?」

「ないよ、羨ましいだけ。奈良くんはクリスマス予定あるの?」

「…相手次第、かな」

「うわ、奈良くんも爆発したらいいよ」

「おい」


 目を逸らし頬をポリポリかいて照れたような仕草を見せる奈良くんに白目を剥きそうになった。
 なんてことだ。まだ子供だと思って甘く見ていた。この歳で彼女がいるなんてまったく最近の子は。


「いいけどね、別に。今のわたしには仕事が恋人だから」

「ふーん?寂しいっスね」

「マジで爆発させてやろうか」

「冗談デス」


 あーもう絶対任務もらおう。雑用でもいいから仕事もらおう。決めた。今から綱手様に頼みに行く。
 しかし、よいしょと席を立とうとすれば奈良くんに呼び止められた。


「どこ行くんスか」

「綱手様のとこ」

「何しに」

「25日の仕事をもらいに」


 奈良くんは一瞬目を丸くしてから、まるで目を逸らすかのようにその切れ長の目を伏せた。


「…それは、困る」

「どうして?」

「飯にでも誘おうと思ってるから」

「……誰を?」

「アンタを」


 ………はい?
 間抜けな顔を晒すわたし。


「……、ごめんもう一回」

「だから…25日、俺と、飯にでも行きませんか」

「……………」

「もしもーし」

「……だって、彼女は…?」

「?いませんけど」


え?だってさっき、相手次第って言って…………え?もしかして相手ってわたしのこと?つまり相手次第っていうのはわたし次第ってこと??


「…何で、25日にわたし…」

「それがわからない歳じゃないっスよね?」

「…!」


 ついさっきまでは大人びた笑いを零していた奈良くんだが、今は一転して拗ねた子供のような顔をしている。こんな顔は初めて見た。



「まぁ、だめっつうなら俺も仕事もらいに行くかな」


 ぽかんと間抜け面のままつっ立っていると、そう言って奈良くんも席を立ち上がった。
 待って。今度はわたしが奈良くんを呼び止めた。


「…ご、ご飯くらいなら、行っても…いいかな」

「んじゃ約束」


 偉そうな言葉を吐いたにも関わらず、情けなくも緊張からどもってしまったわたし。かっこ悪い。
 それでもそんな言葉に何とも嬉しそうに照れ笑いを浮かべる奈良くんにわたしの中で何かが爆発したのだった。




起爆スイッチ
何これ、顔熱いんですけど





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