本日も木の葉の里はいつも通り平和である。遠くでは街の人達の活気溢れる声が聞こえ、また遠くでは子ども達の楽しそうな笑い声が響き、。そして目の前。木陰ではいい年したおっさんが本をアイマスク代わりに昼寝をしている。


「…先生、カカシ先生」


声をかけてみるも反応はない。もう一度名前を呼びながら今度は軽く揺すってみてもやっぱり反応はない。

次の任務に向けての修行に付き合ってもらおうと思ったのに。別に特別急いでいるわけではないが、どうせ始めるなら早い方がいい。なのにカカシ先生は一向に目を覚まさない。まさか殴るわけにいかないし…。

ひょいと本を持ち上げれば何とも安らかな寝顔。といっても顔の4分の3は隠れてしまっているのだが。


「…、……」


そこでふといつもカカシ先生の顔の半分を覆う口布の下が気になった。これだけ呼んでも揺すっても起きないのなら、その口布を多少ずらすくらい出来るのではないだろうか。もしかしたら今なら先生の素顔を見ることができるのではないだろうか。

そんな思いから先生の口布にそっと人差し指をかける。何とも言い難い緊張感が私の心臓を騒がせ、指先にじんわりと汗をかかせた。ごくり、唾を飲み込みゆっくりと指先をずらす。


「はい、そこまで」
「ひ…っ!」


が、失敗。口布がほんの数ミリ動いたところで先生の手が私の腕を掴んだ。そしてゆっくりと上体を起こしてから私を見据える。


「なーにしてんのよ、お前は」
「べべべつにこの機会に先生の素顔を覗き見しようなんて考えてませんよ!」
「……」


はぁ、とわりかし盛大な溜め息をついた後先生は掴んでいた私の腕をグイッと引き寄せた。それによってバランスを崩した私の体は先生の胸へとなだれ込む。何だこれ。


「…あのぉ、えっと……」
「そんなに見たいなら見せてあげようか」
「え…?」


キスする時はコレがあっちゃ出来ないからね、と口布に自分の人差し指をかけた先生は見たこともない妖し気な笑みを浮かべていて。


「う、ぁ、ちょ……っ」


徐々に近付いてくる顔に思わず目をかたく瞑れば、くすっと小さな笑い声が聞こえた。その声に恐る恐る目を開くといつもの笑顔のカカシ先生がいた。


「なーんてね」


人の寝込みを襲った罰だよ、と顔の横でぱっと両手を広げる先生に気付いたら頭突きをお見舞いしていた。













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