「むずい…」

「大丈夫、君なら出来るさ」

「早いとこ終わらせてくれ…」


じゃないといつまで経ってもおれに平和な休み時間が訪れない。本日3回目のこのやりとりにもいい加減嫌気がさしてきた。この2人が10分休みの度に繰り広げる救いようのないやりとりにおれの精神は限界を迎えつつある。


「とりあえず深呼吸だ、ナナちゃん」

「うん」


すぅ、はぁ、と素直に深呼吸をするナナ。この2人が一体何をしているのかと言うと、まぁ簡単に言えばナナの噛み癖の矯正だ。早口言葉を3回正しく言えないとドアは開かない仕組みである(ドアの開閉は廊下側一番後ろの席と言う理由だけでおれに押しつけられた)。そのため三回どころか一回も上手く言えないナナは教室を出られない。それに無理矢理付き合わされてるおれもこの場を離れられない。迷惑な話だった。


「隣のきゃくはよくきゃき……、あぁあまただめだ!」あぁ、無理だ。このままじゃ一生かかっても無理だ。何か手を打たねェと……そうだ!


「なんかこう失敗した時のペナルティとかがあった方がいいんじゃねぇか?」

「なるほどな、ウソップにしては冴えてんじゃねェか」

「“にしては”は余計なんだよ!」

「例えばどんな?」

「そうだな、無難にデコピンとかしっぺとか」

「うわ、やだ!次こそ成功させてみせる!」


深呼吸をしゆっくりと口を開いてぐっと拳を握りいつになく真剣な眼差しを見せるナナ。これはもしかしたらという淡い期待を抱くも、それは即座に崩れさることになる。


「となりのきゃくはよくかききゅうきゃくだ、となりのきゃくはよくきゃききゅうきゃくら、となりにょきゃふ〇*#§@£…!」


もはやそれを活かして生きていけば良いと言えるほどの噛みっぷりだった。


「惜しい!一回目と二回目と三回目がほぼ言えてなかった!」

「全部じゃねぇかッ!!」

「手応えはあったわ!」

「どこに!?」


キーンコーンカーンコーン

あぁやっと解放される。休み時間終わりのチャイムに今日ほど感謝したことは無い。


「わたし罰を受けるのね…」「いや、君の代わりにおれが受けるよ」

「だめよ、そんなの…!」

「ナナちゃんが苦しむ姿なんて見てら「お前らもうやめちまえよ!!」






(つき合いきれねぇ!)






* **

大変お待たせいたしました!
そしてお待たせしたにも関わらず可愛い要素の全く見いだせないただのウソップが可哀想な話になってしまいましたすみませんんんん!(土下座)


うみ様、企画参加ありがとうございました!
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