*主人公は伏見の上司(同年代)



「暇だ」

「…は?」

どん、と効果音がつきそうな勢いで俺の前で仁王立ちしている上司(20)に思わず不機嫌な声が漏れた。

「…働いて下さい」

「やだ」

ぷいと顔を背けた上司に今度は溜め息が漏れる。いつだってこの人はこうだ。暇じゃない癖に暇だと言っては俺にちょっかいをかけて、仕事を終わらせられなくて、副長に怒られる。まず俺に絡む意味が分からないし、仕事だってやれば出来るんだからやればいいのに。

「ふーしみー」

「………」

こうなったら無視だ。こんなろくでもない上司に構ってたら俺も副長に怒られる。それは避けたい。非常に面倒だ。

「なあ、伏見」

「………」

「伏見ー伏見さーん」

「………」

「…っ、伏見ぃ…」

「チッ……んだよ苗字」

ついに鼻をぐすぐす鳴らして半泣きになった上司に苛立ちが募り、反応してしまった。俺超不機嫌なのになんでそんなに笑顔なんだMか、Mなのか。

「伏見が、伏見が…!」

「俺がなんだよ」

上司にタメ口で話すなんて御法度だろうが、生憎俺はこいつに敬語を使う気がなくなってしまったのだから仕方がない。本人も気にしてねぇみたいだしいいだろ。大体こいつに今まで敬語使ってたのが奇跡みたいなもんだった。よくよく考えたらセプター4に入った順以外は特に変わりもないし、戦闘に関して言えば俺の方が優れているんじゃ「な、」

「……な?」

俺の思考を断ち切ったこいつの言葉はさっぱり意味が分からなかった。つーか何でそんな目キラキラさせてんだよ気持ち悪い。

「名前呼んでくれたあああ!」

「……………は?」

「だだだだって!いつもは俺のこと不機嫌そうに見て舌打ちして、仕事して下さいって言ってお終いじゃん!」

「はあ、まあ」

「一回も俺の名前呼んでくれなかったから、嬉しくて…!」

「……はあ」

意味が分からない。なんで俺に名前を呼ばれたからってそんなに喜ぶんだ。俺に名前を呼ばれて怒るやつはいたが喜ぶやつは初めて見た。

「お、俺、頑張る」

「何を」

「仕事頑張って、伏見に名前って呼んでもらう」

「……はあ」

やはり分からない。でもまあ、そんなんで頑張ってくれるのはありがたいし、ころころ変わる表情は見ていて飽きないし、ずっと見てたい気がしないでもない。

「じゃあせいぜい頑張れよ、苗字」

しばらくは退屈しなさそうだ。


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