*むぎこ様へ/現パロ
高校教師(国語担当であり、担任等はしていない)という職に就いて早三年。生徒とも同僚ともそこそこ上手くいっているところに、問題児が現れた。
苗字名前。2年A組の生徒で、1年時はクラスの中では目立たない存在で、成績は中の中。容姿は悪くもないが特別良くもなく、学年に彼に好意を抱いている人が2、3人いるだろうか、という程度。素行は良く、手のかからない生徒。
以上が私が彼について知っている情報だ。そんな彼が突然服装を崩し始め、授業をサボることも目立ってきた。
…で。別に彼の担任でもなく、接点が国語の授業だけという私に、彼を何とかしろとシン(一応校長である)が言った理由は、そう、国語だ。
荒れ出してから成績も当然下がった彼だが、結果を見てみると何故だか国語の成績だけ著しく低いのだ。ぶっちぎりの学年最下位だ。国語のテストで一桁ってなかなか珍しいんじゃないだろうか。
そういえば、彼は国語の授業に出てくれてはいるが、話を聞いている様子はまるでなく、私のことをじっと見つめていた(睨んでいた、かもしれない)。あの視線に耐えきれず、一度どうしたのかと聞いては見たものの、うっせえ、と顔を背けられておしまいだった。全く、思春期とは面倒くさい。
私は山積みになった課題を減らすべく、苗字くんを呼び出した。
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「で?俺に何か用?」
「ええ、言いたいことはたくさんあります」
「へえ…なーに?」
「そうですね…それでは手短に。私のことが嫌いなら、はっきり言って下さい」
「…なんで俺が先生のこと嫌いだって思うの?」
「服装をだらしなくするのはともかく、私の担当教科でだけ赤点をとるのも、授業をまるで聞いていないのも、私に対して嫌悪からくるものでしょう?そんな回りくどいことをされるのは面倒ですし、するのも面倒でしょうから嫌いならば今言って頂いた方が…」
「違う」
「…は?」
「だって先生、生徒皆に優しいから」
「…?あの…すいません、言ってる意味が…」
「…だから、問題児になれば、先生の気くらいは引けるんじゃないかなって、思って…」
「……え」
「俺、頭そんなに良くねえから、これくらいしか方法思いつかなくて、それで、その…悪かった」
「いや、苗字く…」
「…っ、あ、明日っからはちゃんとするから。じゃあな、今日言ったことは気にしなくていいから。また明日」
「あ、その、ま、た明日…」
そうは言っても苗字くん。展開が早すぎて私の脳では処理仕切れないのですが、どうすればいいんでしょう。あなたの耳まで真っ赤な顔が頭から離れないのですが、どうすればいいんでしょう。それにその顔を、可愛いなんて思ってしまった私の気持ちの行き場は何処へやればいいんでしょう。授業中に私のこと見てたのは、嫌悪じゃなくて好意だと取っていいんでしょうか。
ああ、どうやら課題は減るどころか増えてしまったようです。思春期って本当に面倒くさい。
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