帰り道、中級がいつもたむろっている場所に姿が見えないのが気になった。先生は気にする必要はないと帰ってしまったが、やはり気になって辺りを捜索してみると、なにやら茂みがガサガサと音を立てている場所を見つけた。それと共に話し声も。
「中級か?」
茂みを掻き分け覗いてみると、そこには中級たちと、
「え……苗字?」
隣のクラスの苗字名前が座っていた。妖と付き合ってきた人生の中で驚くことはたくさんあったけれど、今までで一番驚いたかもしれない。だってまさか、知り合い、しかも同級生が妖と座って話をしているんだから。彼は、見える人なのか。
「あ、夏目くん」
「どうしてここに…」
「うーん、この子たちがいたからかなあ」
中級たちを見て苗字がニコニコと笑う。そういえば苗字の笑顔は癒されると学校で噂になっていたのを思い出した。なるほど、分からなくもない。
「夏目様のご友人と聞いたもので、つい色々な話を聞いてしまいました」
「夏目様は学校ではあまり話すことはないとか」
「え、ああ、まあ」
「へえ、君たちは中級っていうんだ」
マイペースに話し続ける3人に少し嫌気がさしながらも、苗字と話があると言えば中級たちが頷いて帰っていく。とはいえ、二人きりになるのは初めてだから少し気まずい。
「夏目くんは、見えるんだね」
「…ああ」
「昔から?」
「ああ」
「そっか」
目を伏せて柔らかく微笑む苗字は綺麗だ。今にも消えてしまいそうなくらい透き通った白い肌に、細い髪の毛。人のことはあまり言えないが、腕も折れてしまいそうに細い。
「僕もね、昔から見えるんだ」
「…そうか」
「そのせいで苛められたりもした」
「俺もだ」
「でも、僕は妖が好きだよ」
「…ああ、俺もだ」
自然と笑顔が零れた。妖が好きだと、言い切った苗字も笑顔だった。
「夏目くん、よければ君の今までに会った妖の話を聞かせてよ」
「もちろん」
妖のおかげでこの出会いがあったんだ。やはり妖も捨てたものではないらしい。
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