アツヤが消えた。それと同時にマフラーも外した。僕は思った以上にアツヤに依存していたみたいで何かとアツヤに頼る癖を、マフラーに触れる癖をなかなか直せない。首元に手をやっても前みたいなマフラーの柔らかい感触はなくて、手は虚しく宙を彷徨うだけだった。何度も何度もアツヤに話しかけてみたけれどアツヤは消えちゃったから返事をしてくれないんだ。どうしようもない気持ちだけが残ってアツヤに申し訳ない。ごめんねって言っても伝わるはずないのにそう言っちゃうのはやっぱり癖なのかな。また首元に手を伸ばした。ああ、僕なにやってるんだろう。アツヤのことに悩んでアツヤに頼ろうとして、全て同じ繰り返しなのに僕は一体なにをやっているんだ。顔を上げて視線を彷徨わせると豪炎寺くんと目が合った。もしかして今の見られたのかな。アツヤに頼ろうとしていた僕を。またボール当てられちゃうのかなあと考えると今でも鮮明に甦るあの痛み。あれは痛かったな。もう二度とあの思いはしたくなくて僕はいつも通りに笑いかけると彼はいっそう眉間に皺を寄せて僕の方に歩いてきた。少し冷や汗が流れてきて思わず僕は口元を引きつらせる。別に豪炎寺くんにご機嫌取りをしたいわけじゃないけど彼の機嫌を損ねるのは出来るだけ回避したいところだ。機嫌が悪くなった彼が僕は苦手だった。普通に話す分にはとても良い人だし面白いし、キャプテンたちと同じくらい彼が好きだ。けれど機嫌を損ねた彼は良い人も面白いもあったものじゃないというか、まあとにかく彼は怖い。至極自然に豪炎寺くんから距離をとろうとして僕は彼に背を向けて歩く。アツヤがいればな、なんて僕はとんでもない事を思った。手を掴まれた。あ、

「どうしたの豪炎寺くん」
「…吹雪」
「な、なに?」
「無理はするなよ」

がしがしと乱暴に頭を撫でられた。怖かった顔がとても優しかった。いまいち何が起こったのか何を言われたのか理解出来なかった僕は口をだらしなく半開きにして豪炎寺くんを見る。そうすると彼は口を少し引きつらせて笑った。顔が熱い。あ、頭を撫でられたなんて僕、こ、子供みたいじゃないか。気付けば豪炎寺くんはもういなくて、キャプテンたちの元に向かっている。ああああアツヤ、アツヤ!どうしようアツヤ。僕、もうアツヤだけに頼る必要がないみたい、です。



0807.やっと弟離れかよ




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