ぐちゃり、とグリーンが音を立てて僕の眼球を舐める。あまりの痛さに僕は悲鳴をあげたけれど恐怖と痛みで渇ききった喉はひゅう、と音を鳴らすだけだった。ぐちゃぐちゃとグリーンの舌は僕の眼球を容赦なく抉り、ついにはグロテスクなその音が僕の耳を浸食する。あああ、痛い。痛いよグリーン。ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ。響き続けるその音は昔を思い出させる。え、あれ?懐かしいな。なんだっけ、この音。ぐちゃぐちゃびちゃびちゃ。冷や汗が流れた。痛い、なあ。「や、め。いた、痛いよ」

「ん。あ、ごめん」

眼球を存分に舐めたグリーンは満足気に笑って手を合わせた。ごめんってポーズ。とても軽い謝罪に思えて僕は腹立たしくなる。こっちは凄く痛かったのに。そう言ってもグリーンのことだから僕の頭を撫でてまたごめんって笑うんだろうけど。舐められ、舌で抉られた眼球は今にでも悲鳴をあげそうだった。片手で押さえても痛みが引くわけではない。けれどこうせずにはいられないのだ。だから無性に擦りたくなった。我慢しきれなくなって擦ると溢れ出てくる涙。痛くて溢れたのではない。生理的に出てきたものなんだと思う。そして涙を拭おうとすればする度、流れ出てくる。これが悪循環というものなんだなあって、僕は暢気に考えた。グリーンが目を擦っている僕の手を掴む。

「もっと痛くなるぜ」
「痛くしたの、誰だと思ってるの」
「ごめんって」
「心がこもってない」
「あはは。昔もそう言われた」

照れ臭そうに笑うグリーンを見てまた懐かしいなあって思った。未だに響いているグロテスクな音を聴いているとグリーンの言う昔を思い出しそうで少し怖い。幼い頃からグリーンは少し変わっていたから。僕も人のことは言えないけど。そういえばグリーンは愛情表現だって言ってたな。今もだけれど、僕には到底理解出来そうもない。眼球を舐めるだなんて変態もいいとこだ。それに興奮している僕自身が一番情けなくて惨めで、理解出来ない人間なのかもしれない。

「なあ、お前のこと好きなんだよ」
「君は身勝手だから僕は嫌いだ」

グリーンは目を丸くした。それから愛しいものを見る目つきで僕を見る。僕の顔を大切そうに両手で包んだ。ぎらぎら光る目と視線が絡み合う。あ、欲情してるな。「じゃあ身勝手な俺も好きになって」
眼球を舐めたグリーンの舌と嘘を吐いた僕の口。僕たちは世界一気持ちの悪いキスをした。



0720.君の身勝手さには反吐が出る




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