俺の幼馴染は俗にいう自殺志願者だ。とくにリストカットやらの自傷行為をしているわけではないが、事あるごとにあいつは死にたいと言う。それくらいなら俺だって言うし、むしろ言わないで生きている奴がいるのかどうかさえも危うい。別に死にたい、と言うから自殺志願者だというわけではないんだ。あいつは死にたいと言ったあとに必ず死について話し始める。あいつが言うに、死というのは人間への一番綺麗で最高の贈り物なのだそうだ。誰から、とは言わない。死は平等に人間に贈られてくる。楽しそうに言うもんだから俺は「ああ、こいつ本当に死にたいんだな」って思うほかない。だってそうだろ。あんなに楽しそうに死について語る人間なんてそうそういないんだから。
所謂あいつは苛められっ子だった。だから俺は苛められているから死にたいとあんなにも願っているのかと思ったが、どうやら苛められている原因はあいつが暗くてよく死にたいと言うからだと聞いた。ならば死にたいと言うのをやめれば苛めはなくなるのかと思ったが人間は他人を下に見て貶すのがとても好きだということを思い出して今更苛めがなくなることはないな、という結論に辿り着く。一度味わった快楽は忘れられないもんだ。あいつの机や下駄箱にはいつもたくさんのごみが溢れかえっている。とくに気にしていないようで、あいつは机に詰め込まれたごみを毎日毎日ごみ箱に捨てにいるのだが、俺はいつか机さえもどこかに隠されるのではないかと気が気ではない。「…グリーン、早く日誌書いて」あ、いっけね。色々と考えすぎてて日誌書くの忘れてたぜ。外に目をやれば日が落ちるにはまだ時間があった。早いとこ書いてさっさと帰らねーと。
ふと、レッドと目が合う。そういえばこうやって顔をちゃんと見ながら話すって久し振りだ。話はするけれどいつもこいつは俯いてて顔は見えなかったし。あ。改めてよく見れば少し大人っぽくなったな。レッドの口が動く。
「……そんなのじゃ、死ねないよ」
「え?」
「だから、それじゃ死ねない」

レッドの目は俺が今手に持っているものに移っていた。俺の手の中にあるのは少し錆付いたカッター。さて、どこから間違っていたでしょうか。



0719.間違い探し




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