「グリーンなんか嫌いだ」
呟いたつもりの言葉は意外にもはっきりと響いた。おかしいな、小さく言ったつもりなんだけど少し声が大きかったな。あはははははそれほど僕はグリーンが嫌いなのかな。気持ちを込めすぎたら声が大きくなったよあはははねえ僕はグリーンが嫌いなのかな。分からないんだ分からないんだ判らないよ。心臓を引き千切って中を見ればわかるかな。あ、でも心臓は心じゃないんだってそれじゃあわからないよどうしよう。ぐるぐる目が回って気持ち悪くなった。僕は吐き気を堪えながら笑うともっとひどくなった。この感情は汚い嘔吐物に似ているのかもしれない。ううん。違うよ僕のこの感情は汚いなんてものじゃないよ濁っているし、それでいてとても汚い。嘔吐物のようなものだけれど嘔吐物だってわからない程に濁って見えない。ねえ僕何言ってるの誰か教えて自分でもわからない。

「っは、」
「無理すんな。吐けよ、大丈夫だから」

嗚呼もうなんて気持ち悪いほど優しい声なんだ。背中にグリーンの手が添えられてゆっくりと僕の背中を擦る。やめてよ僕は吐きたくなんかない。自分の感情なんて見たくない。汚い汚い汚い汚いきたな、 ああああああもう吐いちゃったじゃないかごめんねごめんね。グリーンに僕の感情を見せちゃったごめんね。でも勘違いしないで。これは僕の感情じゃなくて、それによく似たものなんだよ。
僕の吐いたものが地面に飛び散っている。汚い。僕の感情はこれに靄がかかっているからもっと汚い。グリーンは僕の吐いた汚いものを少しだけ見て、僕の口を親指で拭った。あ、あ、僕の感情に触った。「…汚いよ」だってそれは僕の、

「汚くなんかない。汚くねーよ」
「僕はっ、グリーンが、嫌い、なんだ」
「それでも俺は好き」
「……馬鹿じゃ、ないの」
「うん。俺、馬鹿だよ」

グリーンは笑う。それから僕の額に口付けて抱きしめた。温かくてとても気持ち悪いよグリーン。やめてよ嬉しそうに笑わないでよ。嫌いって言ってるじゃないか。僕は嫌いなんだ、どうして好きなんて言うの。僕はグリーンがいなければ何も出来ないの、だから嫌いなの。甘やかさないでよ。僕は一人で生きていくって、決めたんだ。でも僕から離れないで一人は嫌だ。傍にいて。僕が一人で生きていくために。「一人は、嫌だ」「だから俺はずっと傍にいる」だから甘やかさないでってば。僕の感情が濁って見えない。



0717.恋なんて汚いもんだ




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