レッドという男は少しばかり変な奴だった。無口で無表情な時点で周りとは違う雰囲気を醸し出しているが俺が言いたい変、とは違う。無口で無表情な人間なんて世界を探せばいくらでもいるだろうし、話し掛け辛いとか何考えているか分からないってだけで特に変でもないのだ。ただ、自分が普通だと思っている人間は自分達と違う人間を変な奴だと言って差別するけれど。普通って何だろう。自分みたいな人間がたくさんいるから普通なのだろうか。周りに溶け込めるから普通、なんて言ったら勘違いも甚だしいと言ってやりたい。普通なんて存在しないのだ。自分と似たような人間がたくさんいるだけで、それは普通になんて成り得ない。もしかしたら普通じゃないと、変な奴だと思っている人間こそが人間の普通だったらどうする。あー、何かもう考えんの馬鹿らしいや。

「要するにお前は普通の人間から見たら変なんだよ」
「はあ…。へえ、そうなんだ」
「…何その別にどうでもいいやって顔」
「いや、だって別にどうでもいいし。変なら変で、ふうんって」

変だと何か問題あるの、と言わんばかりの目で俺を見る。別に問題はないが周りの目が気にならないのかと言おうと思ったが、昔からこいつは周りなんて気にしなかった事に気が付いて口を噤む。レッドは自分を変だとも思っていないし、普通だとも思っていない。要するに自分にも周りにも興味がないという事だろうか。いや、違うな。興味がないんじゃない。興味とか周りの目とか、きっとどうでもいいのだ。

「グリーンは、」
「うん」
「グリーンはどうなの。僕を変だと思ってるの」

え?と情けない声が俺の口から洩れる。嫌な汗が背を伝った。「……そんな、わけ、」
レッドは俺の幼馴染だ。物心付いた時には何時も一緒で、そんな、レッドが変だなんて思ったこと一度もない。あれ。おかしいな。ちょっと待ってくれよ。嫌だな、どうして俺焦ってるんだ?ずっと一緒だった。たくさん遊んだし、同じくらい喧嘩もした。俺達仲、いいじゃん。レッドのこと変だなんて一度も、

「そんなわけ、ないだろ…。な、何言ってんだよレッド」
「…うん。ごめんねグリーン。いきなりおかしなこと聞いちゃって」
「え、あ、いや…。俺も、ごめん」

そう言うとレッドは頬を緩めた。一瞬、憎しみが溢れて酷く歪んだように思えたが俺は気のせいだと思うことにする。絶対、気のせいだ。そうでもしなければ俺は恐怖に耐えきれない。レッドのあんな顔、見たことない。それから口が動いて何かを呟いたように見えたが俺には聞こえなかった。聞き返すのも何だったから何時ものように、昔喧嘩して仲直りした時のように、頭を撫でてやろうと手を伸ばした。
ばしん、と妙に小気味良い音が鳴って同時に感じた僅かな痛み。レッドが叩いたんだって気付くのに時間は掛からなかった。じわじわと赤く腫れあがる手を目の端に捉える。本物の赤が俺を睨んでいた。嗚呼、さっきの顔。
「触るなよ。この、」



0716.うそつき




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